習政権が発足して以来、一貫して唱えてきたのが「反腐敗」だ。

 「物が腐れば虫がわく」――。2012年11月、習近平氏は政権の座に就くやいなや、「汚職がひどくなれば党と国は亡ぶ」と反腐敗の重要性を訴えた。

 反腐敗キャンペーンはその翌年から強化された。「役人の公費による旅行、自動車購入、接待」への規制が強まり消費が冷えこんだが、「ソ連崩壊を招いたのは共産党の腐敗だった」と信じる習氏は手綱を緩めない。

 この反腐敗キャンペーンは、「相手を選ばず、権力の有無を問わず、汚職の事実があれば摘発を行う、共産党の存亡に賭けた闘い」(「人民日報」系列の雑誌「環球人物」11月号)だという。習政権は、「2021年の建党100周年」を目指し、法律化と制度化を進め、汚職撲滅を遂行すると宣言している。

 この反腐敗キャンペーンがいよいよ日本企業にも及ぶようになった。日系企業の中国人幹部が捜査の対象になったのだ。

 2014年12月19日に、日産自動車の中国合弁会社の副総裁が“重大な規律違反と違法行為の疑い”で調査の対象になっている、とする発表が行われた。また、12月31日には、ホンダの中国合弁会社・東風ホンダの副社長ら中国人幹部2人に、党内職務の解任などの処分が下された。理由は公費を不正な旅行に充てたというものだった。

 今や日系企業も、中国共産党の中央規律検査委員会による調査の対象である。習政権の汚職摘発の強化は日系企業にとって新たなリスクとなっている。