日本では2014年の世相を表す漢字として「税」が選ばれた。もしも中国で2014年の世相を表す漢字を選ぶとすれば、おそらく「腐」になるだろう。

 中国では2014年の1年間で、大臣・副大臣級の共産党幹部が60人も摘発された。中国の若者たちはネット上で「腐敗していない共産党幹部がいるだろうか」と書き込んでいる。「腐敗幹部による腐敗幹部の摘発に何の意味があるのか」という辛辣な書き込みもあった。しかし、そうはいっても、腐敗幹部を摘発しないよりは摘発したほうがいいだろう。

 共産党中央委員会政治局前常務委員の周永康氏が腐敗、姦通、機密漏えいなどの罪に問われ逮捕されてから、ネット上では習近平国家主席を支持する書き込みが増えている。だが習近平氏の反腐敗キャンペーンには大きな落とし穴がある。それは、腐敗して罪を犯した幹部を摘発しているが、その幹部がなぜ腐敗したかという総括がない点だ。共産党幹部が今後腐敗しなくなるような制度作りはなされていないのである。

 習近平政権がこの2年にわたって繰り広げてきた反腐敗キャンペーンは、日本の年末の大掃除のような“恒例行事”であり、効果は一時的と見る向きがある。また、反腐敗キャンペーンは権力闘争の一環に過ぎず、習近平氏が政敵を倒すために展開しているだけだという見方もある。これらの見方はいずれも一理ある。

鄧小平路線を終わらせる習近平政権

 ここで改めて習近平政権誕生の意味を検証してみよう。筆者は、1つの時代の終焉を象徴するものと捉えている。

 すなわち、鄧小平の時代が習近平政権の誕生で終わったのである。鄧小平路線は35年にわたって奇跡的な経済高成長を成し遂げたが、行き詰まっているのも明白である。経済こそ成長したが、環境汚染が深刻化し、所得格差も極端に拡大してしまった。政治改革がまったく着手されなかったため、共産党幹部の腐敗も空前絶後と言われるほど深刻化している。