前回の本コラムで、中国が11月にAPECでぶち上げた「一帯一路」構想を伝えた(「アジアの中心で中国が『この指とまれ』、日本はどうする?」)。インフラ整備で陸と海の両方のシルクロードと経済圏を構築するという大がかりな構想である。

 これに対するアジア諸国の反応は興味深い。習近平国家主席の「この指とまれ」に飛びつこうという積極派と、消極派あるいは心中複雑派に分けられた。

 「一帯一路」構想には通商貿易の枠組みも絡み、関係国の思惑は複雑だ。アメリカ主導のTPPに対し、自ら主導するアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)をぶつける中国。その一方で、米韓同盟で米国と固い絆を築く韓国が、APEC期間中に中国との間で自由貿易協定(FTA)を妥結した。

 台湾では中国との経済協力や統一について国内で意見が分かれる。2013年に台湾と中国はサービス貿易の自由化協定を結んだ。医療や金融、建設などの市場を相互に開放するこの協定に対して、台湾の学生らが立法院の議場を占拠し反発した。

 だが、「一帯一路」構想を知った台湾は青くなった。台湾の「聯合報」は次のように伝える。「台湾が『一帯一路』と『FTAAP』の枠組みに入るのを拒絶したところで、もしもそれ以外の道筋を見いだせないとすれば、台湾は海の上の孤島になるだろう」

 中韓FTAは、さらに台湾を追い込んだ。中国の8兆8000億ドル、韓国の1兆1000億ドルのGDPが形成する巨大市場に勝てるのかという焦りだ。産業の7割が重複すると言われる台湾と韓国だが、中国からの発注が韓国に流れるのは目に見えている。