師走のある日、私は茨城県の百里基地にいた。帰郷していた先月、航空自衛隊のF15戦闘機に体験搭乗するという名誉をいただいたからである。

 航空自衛隊の佐官が操縦する2人乗り戦闘機の後部座席に私は座った。その搭乗では最終的に、最高速度マッハ1.15(時速約1400キロ)を出し、3万フィート(地上から約9キロの高度)まで昇り、フライト中の最高重力は、私の体重のほぼ7人分に値する6.8Gに達した。

 その時に感じた重力は強烈なものだった。予め口頭で教えられていた耐G動作をして呼吸をしようとしたが、恐らく上手く行かなかったのだろう。脳に血流が充分に行き渡らず徐々に意識が薄らぎ、視界が狭くなってくるいわゆるグレイアウトに陥った。

 ほぼ完全に視野を失ってしまうブラックアウトの一歩手前にある、身体にとってある程度危険な段階である。

今回の体験搭乗で学んだこと

 本稿ではこれを含む、一連の搭乗体験について書きたい。もちろん、F15戦闘機の搭乗自体は過去に何人もの方が行っているので、この場で必ずしも新しい視点は提供できないだろう。また、自衛隊基地での合計2日間という限られた時間と、1時間ほどの飛行で大きなことを書くことも不可能である。

 しかしそのための準備とその体験の一環で、ここでは書ききれないほど多くのことを学んだという点を強調したい。今回は読者の方にお伝えしたい情報の量が多いため、今月と来月の2回にわたって大切な部分を選んで書きたいと思う。

 本稿はその性質から、航空自衛隊を支持する内容を含んでいる。断っておくが、本稿は私個人の意見に基づくものである。この記事の公開にあたり航空自衛隊と米空軍の理解を得ているが、私は彼らの広告塔ではないし、彼らからそうなるよう依頼されたことも一度もない。

 私がこの場を借りて表現するのは、今回の体験を可能にしていただいたことに関する感謝の気持ちと、日本防衛の第一線で戦う隊員達へのさらなる期待とエールである。

 本稿で強調したい点は2つある。1つは、日本の独立と国民の平和を守るべく、自衛隊員は我々一般市民の想像以上の犠牲を払い、あまり公にならないまま多大なる努力をしていることである。

 昨年11月の本コラム(『「右傾化」という国際的誤解を生む日本社会の問題点』でも書いたが、我々は命を張って国を護る自衛隊を今まで以上に理解し、支持する必要があるということである。