本記事は12月25日付フィスコ企業調査レポート(ムサシ)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 浅川 裕之
本資料のご利用については、必ず記事末の重要事項(ディスクレーマー)をお読みください。当該情報に基づく損害について株式会社日本ビジネスプレスは一切の責任を負いません。
メディアコンバート事業が成長、選挙は次の局面も視野
ムサシ<7521>は選挙関連銘柄として証券市場で高い認知度を有しており、今回の衆院選でも解散・総選挙の見通しが報道されたタイミングで株価が勢いよく反応した。衆院選を終えた今、同社の株価は落ち着きを取り戻しているが、次の国政選挙までまったくの無風なのかというと、決してそうでないと弊社では考えている。
今回の衆院選による業績インパクトは今後、上方修正という形で明らかにされてこよう。今回の衆院選は関係各方面にとって突発的であったため、それが投票用紙読取分類機の需要などを押し上げ、過去の実績をしのぐ業績インパクトをもたらす可能性は否定できない。今回の衆院選は同社にとっても想定外であったが、2015年4月に統一地方選を控えていたために、ある程度の在庫を積み上げていた模様で、それが商機の取りこぼしを防ぐことになったと弊社では推測している。
次の国政選挙は2016年7月の参院選となり、衆院選は当分実施されないという見方が主流だが、決してそうは思わない。今回のような形で選挙が行われたのならば、2017年4月の消費再増税を決定するタイミングで、もう一度民意の信を問えという声が高まり、総選挙に至る可能性が十分にあると弊社では考えている。
一方、同社において注目すべき事業は選挙ばかりではない。「メディアコンバート」事業にも動きが出てきている。今期は事業環境の改善傾向が明らかだ。特に、今第2四半期は民需で明確に需要回復の動きが見られた。さらに環境改善という点で、追い風が期待される事案が浮上している。税務書類における「3万円以上の領収書についての電子保管容認」の動きだ。そもそも「e-文書法」で財務・税務書類の電子化をうたっておきながら、3万円以上の領収書は現状、原本保存が義務付けられており、これがデジタル化への障害になっていた。メディアコンバートは来期以降、本格的な回復が期待される。
株主還元も期待が持てそうだ。同社は過去、安定配当としての普通配当をベースとし、業績が上振れた場合には特別配当を払うという形で株主還元を行ってきた。今回の衆院選で業績の上積みが期待されているが、それが実現されれば配当においても特別配当が実施される可能性が高まってこよう。
Check Point
●選挙システムはトータルコストを削減、着実に伸びている事業
●メディアコンバート事業は、法律の規制緩和が後押し、領収書の電子化は追い風
●衆院選が上乗せ、業績予想から上振れての差地へ
衆院選後における「ムサシ」への投資の視点
次の局面が消化されていない状況か
ムサシは証券市場で「選挙関連銘柄」として広く認知されており、11月中旬に衆議院解散報道で株価が急伸した。衆院選挙が終了した現在、同社の株価は落ち着きを見せているが、これで同社への投資機会が終了し、次の国政選挙まで何もないのであろうか。また、業績面でも来期は反動減となり、しばらくお休みとなってしまうのであろうか。