ヨーロッパの人々の生活に欠かせないパン。日本の白いパンの世界とは違い、茶色いパンが多いここヨーロッパで、パン作りを学んでいる日本人はいないだろうかとずっと探してきた。

 とりわけドイツは、パンがおいしい。オクトーバーフェストで有名な人気観光都市ミュンヘンで、そんな人たちを見つけた。110年以上続く老舗「ホフマン」では、日本人見習いを継続的に受け入れている。

 取材を申し込むと、4代目のハインツ・ホフマン氏は「もちろん、どうぞ!」と快く迎えてくれた。

ホフマンの店頭で、お客さんの行列に対応する店員たち。ミュンヘン中央駅からトラムで20分。品質を保つため、支店を開くことはないとハインツ・ホフマン氏は断言する(筆者撮影:以下同)

”パン屋のオスカー”受賞店、ホフマンを目指す日本の若者

 土曜朝8時頃、ホフマンのカフェエリアでコーヒーを飲んでいた筆者は、驚くような光景を目にした。少しお客さんが入ってきたと思ったら、あっという間に長い列ができ、20人くらいがパンを買おうと待ち始めたからだ。

 お年を召した人、若い女性、子連れのお父さん、メモを持って1人でやってきた子供。何人もの店員が、焼き上がったたくさんのパンの中から客の注文に応じてパンを取り、袋に詰める。陽気な店員たちの様子が、気持ちいい。ここがミュンヘンで有名なパン屋だということは聞いていた。しかし、実はこれほどまでとは思わなかった。

 「ミュンヘンだけでなく、ドイツ中に知られていますよ」

 同店の人気について尋ねると、ホフマン氏はそう言った。それもそのはず、このパン屋はパン業界のオスカーといわれるマルクトキーカー賞(Marktkieker Preis)を受賞しているのだ。

 この賞はドイツ語圏3国(ドイツ、オーストリア、スイス)のパン屋が対象で、受賞は非常に名誉なこと。同店は「古き良き時代を残したまま、モダンなマーケティングと経営を行っている」と評価された。