マット安川 初登場となる松崎隆司さんをお迎えして、増税の是非やアベノミクスの行方など、日本経済が抱える問題について広くお伺いしました。

アベノミクスはバブル。支援すべきは輸出産業ではなく内需産業

松崎 隆司(まつざき・たかし)氏
経済誌出版で記者、専門誌編集長などを経て2000年1月に経済ジャーナリストとして独立。経営者像を中心に経営戦略論、リーダーシップ論、M&A、事業継承について経済誌などで執筆。主な著書には『業界別 商売のしくみとしきたり』(日本実業出版社)、『会社破綻の現場』『私が選んだ後継者』『「昭和」の名経営者』など(撮影:前田せいめい、以下同)

松崎 アベノミクスについては、確かに株価は上がっています。雇用も増えています。そういった成果は確かに出ています。ところがよく見ていくと、必ずしも本当の意味での成果が出ているかというと、疑問の部分がいっぱいあるわけです。

 特に3本の矢の最後、成長戦略があまりきちんと効いていないんじゃないかと。事実、GDP(国内総生産)を見ても4-6期、7-9期と続けてマイナス成長になっている。

 景気を回復するきっかけとしては成果はあったと思いますが、それをきちんと成長の軌道に乗せることができなかったという意味では、単なるバブルに終わってしまったのではないかなという気がします。

 アベノミクスがなぜうまく機能しないのかということを考えると、日本の構造そのものが大きく変わったんじゃないかと思うんです。

 例えば1980年代後半まで、日本は右肩上がりの成長を続けてきた。それを牽引してきたのが輸出産業でした。クルマや家電など。ところが90年代、2000年代に入り、日本から海外にモノを輸出するのではなくて、現地に製造拠点をつくって販売するという形に大きく変わった。

 ですから方向性として、輸出産業を育てるのではなく、いまはむしろ内需が日本経済を支えているわけですから、内需産業をどう育てていくのかに主眼を置いた経済政策をやっていかなければいけないと思います。

 それと、日本はすでに世界第3位の経済大国であるということをいま一度認識すべきだと思います。いま必死に経済成長、経済成長と言っていますが、いったいどれだけ成長すればいいのか。もう成長という発想からある程度脱却して、次の段階に進んでいかなければならない時期に来ているのではないかと思います。

 人間でも子供から青年期に向かって成長するためにゴハンをいっぱい食べます。しかし、30歳を過ぎて同じことをするのか。今度は大人としてどういったことで社会に貢献していくのかといったことを普通は考える。

 国家も同じだと思うんです。これからは成長ではなくて、これだけ大きくなった日本が、国際社会に対してどれだけ貢献できるのか。世界から尊敬される国にどうすればなれるのか。そういったことを考えるべきだと思います。

欧米のマネはもう通用しない。日本は原点に返って自分の頭で考えよ

 日本の最大の問題は、経済など目先の問題はいろいろ言われていますが、それらは本質的な問題はないのではと思っています。

 国民全般が不安に感じているのは、20年後、30年後、100年後の日本はどうなるのか、そういう心配が根底にあるのではないか。その中の1つの大きな要素として、方向性を見失っているという問題があると思います。