半分空っぽのモスク
その後にも、筆者の近郊からも続々と若い「ジハーディスト」がシリアへ向かい、亡くなったというニュースが続いている。
今月10日にも、「スウェーデンのイスラム主義者3人が空爆で死亡」という記事が出ていた。1人はストックホルム、2人はヨーテボリ出身だ。3人とも20代で、米軍機の空爆で死んだとある*7。
この記事に、1万5000を超える人が「いいね!」をクリックしている。斃れた戦士はソーシャルメディア上で「殉教者」と呼ばれ、「私の最愛の子供たちに神の恵みを。アラーは楽園にあなたを受け入れるでしょう」といったメッセージが書き込まれる。
もちろん、ほとんどの親は子供が戦地に向かうことを止めようとするが、中には息子がジハードに参加することを誇りに思い、空港まで送っていく両親もいる。
10月末に見た「すべての若者がジハードのためにシリアに行き、今モスクは半分空だ」と題した記事は、こんな内容だ。「今、モスク(イスラム寺院)に来ているのは高齢の者ばかりだ。金曜の礼拝時に、以前は隣の人と肩が触れ合うくらいにぎゅうぎゅう詰めだったモスクは、今は半分空だ」となっている。
この記事の著者はアフガニスタンから4年前にスウェーデンに来た人だ。彼がモスクで会った友人に、「最近はもう、若い人はモスクに来なくなったんだね。寂しいね」と言うと、友人はこう答えた。「知らないのか? ほとんどはジハードのためにシリアとイラクに行っている。彼らはイスラム国家に参加しているよ」
さらに筆者が、その数日後にスポーツジムに行くと、そこで会った別の友人がこう話した。「イスラム国のメンバーは、今から難民申請者を装ってスウェーデンに戻ってくる」「時が来ると、彼らは立ち上がって、またここでジハードを開始する。彼らのイスラム国家は冗談ではないんだ。連中は『眠れる細胞』を他国に送り込み、彼らの力を構築する」*8
増大する欧州内「ジハード」の脅威
つまり現在、焦点化していることは、10代、20代の若者が、次々と「聖戦地」へ向かっているということだけではない。
思想・行動とも過激化されて戦場から戻ってきたジハード主義の若者たちが、欧州などイスラム国外の国々で、同じことを実行するのではないかという懸念だ。つまり彼らは、地球全体に「イスラム絶対主義によって統治されるカリフ国」を建設するために、まず自らの国を「ジハード」によって解放しなければならないということらしい。
そしてこの懸念は、今まさに現実のものとなっている。
*7=http://www.expressen.se/nyheter/tre-svenska-is-krigare-dodade-i-flygattacken/