円安になっても思ったように輸出が増えない。アベノミクスにケチをつけることは、アジアにおける経済発展のメカニズムを研究してきた筆者の仕事ではないと思っている。輸出が増えない背景にはもっと根本的な現象が進行している。

決定的に差をつけられたアフリカ市場獲得競争

 図を見ていだきたい。これは日本と中国からアフリカへの輸出額を示したものである。2009年と2013年について示した(中国は2012年の値。輸出総額は2012年より増えているから、2013年のアフリカへの輸出額はここに示した額より大きいと思う)。

アフリカへの輸出額(単位:億ドル)
出所:中国統計年鑑2013年、日本貿易会

 2009年はリーマンショックの翌年であり、世界経済は大きく落ち込んでいた。2013年は安倍政権がアベノミックスを打ち出したことにより円安が進行した年だ。円安により、輸出が増えると期待されていた。

 図を見て驚くだろう。アフリカへの輸出において、日本は中国に圧倒的に差をつけられている。輸出の9割以上は工業製品。つまり、アフリカは圧倒的に多くの工業製品を日本からではなく中国から輸入している。それは2009年でもそうだったが、2013年になるとその差は拡大した。