先日、第1回EDGEシンポジウムに参加してきました。EDGEとはEnhancing Development of Global Entrepreneur Programの略で、文部科学省によるグローバルアントレプレナー育成促進事業(通称EDGEプログラム)のこと。その趣旨は以下の通りです。
EDGEプログラムとは何か
「我が国におけるイノベーション創出の活性化のため、大学等の研究開発成果を基にしたベンチャーの創業や、既存企業による新事業の創出を促進する人材の育成と関係者・関係機関によるイノベーション・エコシステムの形成を目的としています。具体的には、専門性を持った大学院生や若手研究者を中心とした受講者が起業家マインド、事業化ノウハウ、課題発見・解決能力及び広い視野等を身につけることを目指し、受講者の主体性を活かした(アクティブラーニング)実践的な人材育成の取組みへの支援を行います」(出所:文部科学省)
EDGEプログラムには今年の8月に13校が選定されました。今後3年間にわたって事業が推進され、さらにその後は各校が自主的にプログラムの発展を図ることも期待されています。文科省によるイノベーション人材育成が緒に就く大事な事業であり、先のシンポジウムでは、関係者や有識者の方々から示唆に富む様々な意見交換がなされました。
文科省の担当課長からは「将来の課題を解決できる人や、自ら事業創造できる人の育成を目指す。その結果の進路が研究職でもビジネスパーソンであっても構わない」と、広い視野でイノベーション人材をとらえていました。
また今回の採択校でもあり幹事校でもある東京大学の堀井秀之教授からは、「東京大学i.schoolの知見を活かしたイノベーション教育を確立したい。ファシリテーターの養成や事業創造のメンター育成なども予定するが、学外にオープンに開き、各校の教職員が自身の学校で実践されるような仕組みができればと思う」と波及効果を想定したビジョンが語られました。
慶応大学の前野隆司教授からは、「SDM(システムデザイン・マネジメント)の受講対象をより広げ、東大i.schoolやスタンフォード大d.schoolのように産学を横断するようなプログラムにしたい」と、こちらもこれまでの知見の深化と展開を図る構想が伺い知れました(東京大学i.schoolや慶応大学SDMのこれまでのプログラムは『海外名門大生が殺到する日本のイノベーション教育』参照)。
ジョン・ヘネシー氏の「ブレイクスルーを起こす仕組み」
また、早稲田大学の飯野将人氏(プログラム担当)からは、スタンフォード大学学長のジョン・L・ヘネシー氏がロールモデルの一つに挙げられていました。
ジョン・ヘネシー氏は、RISC型CPUの研究者であり、MIPS社の創業者として世界的に有名ですが、スタンフォード大学の教授時代に、RISCと呼ばれる新しい設計思想のコンピュータ・アーキテクチャーの研究成果を商業化するために、MIPS社を興した起業家精神にあふれた人物です。