日清戦争から120年の今年に入り、中国では解放軍内の不正・腐敗が有事の戦闘能力に及ぼす悪影響を懸念する声が高まっているという。8月19日付北京発ロイター通信記事は、解放軍幹部・国営メディアなどで、「戦争になっても勝てないのではとの疑念も出ている」とまで報じている。
一方、日本の自衛隊についても新しい発見があった。
実のところ、この原稿は御殿場からの帰りの車内で書いている。陸上自衛隊の富士総合火力演習のリハーサルと国際活動教育隊を見学させてもらったのだが、なるほど自衛隊もやるものだと感じた。という訳で、今回のテーマは「日中もし戦わば」である。
中国国内の懸念
例によって、関連報道・事実関係をまとめてみたい。まずはネット上で拾ってきた中国内の論調から始めよう。
今年7月は日清戦争開戦120周年だ。
中国共産党の機関紙「人民日報」や人民解放軍の機関紙「解放軍報」などでは同戦争の敗因分析が活発に行われているらしい。各種報道を読む限り、中国側はこの件につき共産党・軍主導で組織的かつ大規模なキャンペーンを張っているようだ。
こうした背景には、今も軍にはびこる不正・腐敗や海洋主権確保能力に対する習近平総書記の危機感があるとの見方が根強い。
だがこれとは別に、党内・軍内・学会には1894年当時圧倒的に優勢とされた清帝国が日本に敗れた理由、その教訓に学ぶべきだとの論調が少なくないという。少し具体例を挙げよう。
●甲午(日清)戦争に敗れた真の原因は、清朝の政治体制・官僚制度・軍隊が腐敗・堕落していたからである。(光明日報)
●明治維新後に「殖産興業」を進め、西側資本主義の社会制度を導入した日本に対し、清が1860年代に展開した「洋務運動」は社会制度に触れず、改革の効果も日本に及ばなかった。(社会科学院研究者)
●甲午戦争の敗勢は、根本的に清の内政・外交の全面的な失敗が引き起こした。今日の中国も当時と同様、全面的な改革が歴史的任務であり、改革の成否が国家の未来を決める。(第一財経日報)
●海洋権力の喪失が近代中国の落伍を加速させた。海洋強国を建設する歴史的使命は、既に現代中国人の双肩にかかっている。(人民解放軍後勤学院教授)