ロイター通信の記事

 こうした中国内の状況を8月18日付北京発ロイター通信記事は次のように伝えている。

●東・南シナ海をめぐり周辺国との緊張が高まる中国で、最近人民解放軍の不正・腐敗に対する懸念が高まっている。

●現職・退職幹部や国営メディアからは、あまりの堕落ぶりに戦争になっても勝てないのではないかとの疑念も出ている。

●中国政府系メディアはここ数カ月、人民解放軍ではびこる汚職と軍の腐敗が120年前の日清戦争における中国の敗北につながったことを関連付けた記事を相次いで掲載している。

●軍の腐敗体質は、谷俊山・元総後勤部副部長と徐才厚・元共産党中央軍事委員会副主席の収賄容疑という2件のスキャンダルにより改めて浮き彫りにされた。

●軍高官らが懸念するのは、中国で長年にわたり公然の秘密となっている幹部ポストの売買だ。こうした悪弊が優秀な人材の排除につながっているからである。

●軍の元幹部で論客として知られる羅援氏は「腐敗幹部が現れ続ければ、軍にいくらお金を投じても足りないだろう」と指摘した。

●同幹部は、「徐才厚や谷俊山のような腐敗幹部が吸い上げたお金は数億もしくは数十億元になる。これで何機の戦闘機が造れるのだろうか。腐敗を取り除かなければ、戦う前に敗れるだろう」と述べた。

イラク正規軍と同じ病根

 このロイター記事を読んで、筆者は思わず唸ってしまった。「これじゃ、イラク正規軍と同じじゃないか」

 これにはちょっと注釈が必要であろう。筆者の念頭にあるのは、6月10日にイスラム過激派組織「イラクとシャムのイスラム国(ISIS)」がイラク北部の同国第2の都市モスルを占領した事件だ。

 2011年末に米軍がイラクから撤退した際、イラクには米軍が巨額の軍事費を投入し、8年間手塩をかけて育て上げた正規軍が存在した。

 イラク中から優秀な人材を集め、人種や宗派に関係なく養成したベストの人材を管理職に登用した。恐らく当時新イラク軍はアラブ諸国で最も強力な軍隊だったろう。