マット安川 今回の『ずばり勝負』は、台湾取材での李登輝さんインタビューをお送りし、取材に同行いただいた評論家・宮崎正弘さんに解説していただきました。取材では台湾のパワーや可能性を感じる一方で、現地のさまざまな知識人に信頼され、東西の事情に精通した宮崎さんの人柄と博覧強記ぶりにも驚かされました。
常に世界を歩いて情報をキャッチし、著作やラジオを通じて、私たちに真実を教えてくれる宮崎さん。目立つことを目的とせず、自分の知りたいことをただ丹念に調べていく姿は、これぞプロの仕事だと感じました。
日本の政治家は強いリーダーシップを発揮し、官僚の壁を打破せよ
李登輝 日本の内閣総理大臣は、官僚政治が主体となってしまっていて、本当に国民や国の将来のことを考えてやっていこうという人が少なくなりました。
官僚というのはものすごく頭が良いですが、国を変えようとする時に反対ばかりします。
私は台北市長の時に、台北市近郊の農民に家の新築許可証を出したことがあります。農民が家を新築したいというのに、役所の建築管理関係の人間は、新築するには今までの家の所有主の捺印が必要だと言うのです。
しかし、農家には100年くらいの歴史があり、持ち主はほとんど死んでしまっていて不可能です。
そこで、私は建築管理の規則を破り、直接1200の許可証を出しました。役人に対しては、私を訴えたらいいじゃないかと言いましたが、結局、彼らは何もできなかった。それで台北市の近郊にはものすごくきれいな家が出来上がりました。
これは私だけの考えではありません。日本の雑誌である大学教授が書いた論文を見たのです。農村の将来の発展には観光事業と結びつける必要がある、それには農家の改善をやらなければならないとありました。それをヒントに、誰もやらないから私がやったのです。