2010年7月29日、日本で7番目の私設取引所(PTS)運営会社として、野村証券系のチャイエックス・ジャパン(東京都港区)が株式売買の執行サービスを始めた。社員数20人足らず、華々しいセレモニーは一切なく、静かな船出だ。しかし、チャイエックスには、欧州で公設取引所のシェアを軒並み低下させ主要市場に急成長を果たした実績がある。泰平の世を謳歌してきた東京証券取引所も安閑としてはいられない。

 「取引所 VS 私設取引システム」という市場間競争の潮流が、ついに、日本にも押し寄せてきた。

開業1週間で、日経平均225銘柄をカバー

東証も、安閑としてはいられない。取引所VS私設取引システムの市場間競争が始まろうとしている野村はチャイエックスの親会社である米PTS大手インスティネットを2007年に約1100億円で買収した

 日本では、いまだに「株は東証など公設取引所で売買するもの」と思い込んでいる人が多い。大半の投資家は証券会社の営業担当者や、インターネット証券のシステムを通じて取引所に注文を出す。

 確かに、かつては、株式売買は取引所で必ず行わねばならないという「取引所集中義務」があった。だが自由・公平・国際化を目指した日本版ビッグバン(金融制度改革)によって、この義務は1998年12月に廃止。それに伴い、取引所を通さずに、顧客からの売買注文を自社のコンピューターシステム上で成立させるPTSが民間の証券会社に解禁された。

 既に、マネックス、インスティネット、カブドットコム、SBIジャパンネクスト、松井、大和の6証券会社が独自のPTSを運営している。ほとんどのPTSは売買執行を取引が活発な銘柄に限定しているが、夜間取引など東証にはないサービスが売りだ。

 2010年7月、証券取引所共同出資の清算機関・日本証券クリアリング機構がPTSの株式取引も清算・決済保証の対象にしたことから、チャイエックスは参入に踏み切った。

 チャイエックスの取引時間は東証よりも長めの午前8時から午後4時まで。初日は数銘柄から取引を開始するが、1週間後には日経平均株価を構成する225銘柄まで拡大する。

 チャイエックスの米持ち株会社チャイエックス・グローバル(ニューヨーク市)の親会社は米PTS大手インスティネット・インコーポレイテッド(同)。インスティネットは、2007年2月に12億ドル(約1100億円)で野村ホールディングスに買収されており、野村から見るとチャイエックス・グローバルは孫会社に当たる。