東ウクライナの一部地方での住民投票も開票され、米国を中心に西側とロシアはお互い一歩も引かない対抗を続けている。一部にはすでに内戦の様相を呈し始めているとの報道もあるなか、事態の進展を防ぐべく、西側もいよいよ制裁措置を本格化せざるを得ない状況となっているようだ。
前回の弊記事では、ロシアは相当に追い込まれており、経済制裁を厭わずクリミアの独立と編入を推し進めざるを得なかった旨を記したが、実際に経済制裁の効果はいかほどであろうか。また経済制裁はロシアの行動を変化させることにつながるのだろうか。
本稿では、改めて今回の経済制裁がロシアにとって持つ意味を検討してみたい。
効果の乏しい経済制裁
一般に国際政治学の世界では、経済制裁が制裁対象国の行動様式を変更させることは非常に難しいと考えられている。
なぜなら、現代のように経済の相互依存関係が進んでいる状況では、経済制裁の発動は必ず制裁発動国の国内の一部にも負の影響(ブーメラン効果)を与えるので、短期的には支持を得ても、長期的には制裁措置そのものを維持することが困難となるからだ。
他方、両国の経済関係において相互依存が十分に進んでいないとすれば、制裁の発動が対象国に対してそもそも十分なインパクトを及ぼすことはないため、その効果は疑問視されることになる。
ブーメラン効果もない代わりに、対象国を痛めつけることができない。この場合、制裁は形ばかりで内実を伴わないものとなる。
では今回のケースはどうか。制裁措置は有効で、ロシアの行動様式を変革するに足るものとなっているのだろうか。
結論から先に言えば、まだ制裁措置は形式的な範疇にとどまっており、米国を中心に一層の制裁強化が検討されているものの、ロシアの行動を変えることは難しいように思える。以下、4点に絞って、その理由を説明しよう。
第1の理由は、ロシアと経済的な相互依存関係が親密なドイツを中心とする欧州諸国が制裁措置の拡大に慎重であり、制裁が効果を発揮するかどうか不明だからだ。