AsiaX(アジアエックス) 2014年4月7日

 マクリッチ貯水池の南、丘陵地に広がる華人墓地「ブキ・ブラウン墓地」には、シンガポールの礎を築いた先人や戦争犠牲者らが眠っています。しかし、広さ233ヘクタール、10万墓が安置された広大な墓地は、存続の危機にさらされています。

無一文でシンガポールに渡り、ココナッツやゴム農園経営で財を成したチュー・ジューチャット氏(1857-1926)の墓

 2011年に、高速道路PIEや住宅開発用地になることが発表されたためです。工事はすでに始まり、PIEの通る区域内の3,442の墓の掘り起こし作業が昨年末から進められています。

 一方、保存運動も活発に行われています。毎週末行われているヘリテージウォークツアーに参加し、ガイド役のクレア・ローさん、スティーブン・トンさんの案内で墓地へ入りました。

 中には、ガジュマルの巨木や緑の下草に抱かれた静かな丘が広がっていました。

シンガポールの偉人たちが眠る

精巧な石の彫刻でできたライオンが葬者を守っている。顔は日本の狛犬のような中国様式のものが大半だが、一部は西洋風のものも。華人の墓でありながら、多数の異文化の影響を受けて発展したシンガポールの姿が現れている

 古い墓石の数々は、福建、潮州など出身地によって姿形が違います。夫婦や家族は近くに埋葬されているものが多く、夫婦一緒の場合、向かって右に夫、左に妻が土葬されています。

 墓石の背面には、故人を安らかに見守る山を模して土が盛られたものが多くありました。雨水を手前に流す溝が掘られているのが特徴です。

 「チュー・ブーンレイ」「チュー・ジューチャット」のような、通りや地名に名を残す偉人たちの墓もありました。

 中でも、丘の一番上、約600平方メートルの最大敷地面積を誇る墓は、オン・サムリョン氏(1857-1918)のもの。彼の名も、MRTファラーパーク駅近く、「サムリョンロード」として残されています。

 鉱山やゴム農園で働く人材を供給する会社などを経営して多大な影響力を持った人物です。シーク教徒の姿をした2人のガードマンの石像、2頭のライオンの石像が彼を見守ります。長年ジャングルに覆い隠されており、2006年に歴史学者によって再発見されました。