国籍不明の軍隊がウクライナ領内のクリミア自治共和国に展開して、ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアが、同共和国の分離独立を画策しているとして、西側諸国から非難が巻き起こっている。
昨年11月のウクライナと欧州連合(EU)の連合協定の締結拒否から始まったロシアと欧米の対立は、とうとう対ロシア制裁措置の発動にまで発展した。
アンゲラ・メルケル独首相は「プーチン大統領は気がふれたのではないか」と言ったとされるが(後に公式にこの報道を否定)、冷徹なリアリストで知られるプーチン大統領のこと、当然、ロシアの今回の動きが西側の制裁に結びつくと読んでいたことであろうから、ロシア自身、西側の制裁に耐えられるはずと考えての行動であっただろう。
本稿では、ロシア経済の現状からこの問題を検討してみたい。
大胆な財政出動も期待ほど効果得られず
まず、GDP(国内総生産)成長率の動きを見てみれば、ロシア経済は2008年の世界的な金融危機の前と後では、大きく異なった姿を見せている。
2008年以前は好調な油価に支えられ、国民の旺盛な消費もあって高い成長を記したが、2010年以降の回復過程は、経済政策の大盤振る舞いにもかかわらず、むしろ低下傾向にありかつての力強さは見られない。
2013年のGDP成長率は1.3%(速報値)と、経済はマイナス成長に陥ってはいないものの停滞状態にあると政府も見ている。
こうした経済の停滞の主な要因は、2000年代の初めに形成された好調な経済モデルが、現時点ではもはや機能しなくなっているところにある。
とりわけ経済政策のカギを握る財政に関しては、2000年代は歳入が好調で歳出は一定程度抑えられており、財政黒字を保っただけでなく安定化基金に膨大な外貨を積み上げていた。