マット安川 日米の違いを見てこられたジャーナリストが初登場。小国綾子さんに記者として接してきた東日本大震災の被災地・被災者の実態やこれを報じるメディア論まで幅広くお聞きしました。

移民たちが主体的に「アメリカ人になる」国

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:小国綾子/前田せいめい撮影小国 綾子(おぐに・あやこ)氏
毎日新聞記者。1990年毎日新聞社入社。長野支局、社会部、夕刊編集部などを経て、07年秋に退社。家族とともに4年間米国滞在後、11年に帰国し毎日新聞社に再就職。(撮影:前田せいめい、以下同)

小国 2007年から4年間、アメリカで暮らしました。一番驚いたのは、「アヤコはアメリカ人にならないの」と何回も聞かれたことです。

 私は日本で生まれた日本人だ、夫の仕事の都合でここに住んでいるだけだと言うと、決まって「でも元々よその国から来た人たちがみんなアメリカ人になってるよ」と言われました。

 日本はみんなが「日本人として生まれる」国ですよね。例えば日本女性と外国人の男性が結婚して、日本に住むとします。その男性が日本国籍を取ったら、周りの人は「親日家の外人さんやね」と親しんでくれるでしょう。しかし、日本人とは呼んでもらえない気がします。

 そのへんの感覚が、アメリカは全然違う。よその国からの移民が主体的に「アメリカ人になる」国なんです。理屈では分かっても、感覚として理解できたかというとちょっと自信がありません。

宗教の垣根を越えて大勢が被災地に手を差し伸べてくれた

 3.11の大震災はアメリカで迎えました。夫の実家は仙台ですし、女川や気仙沼にはよく遊びに行っていたこともあって、ニュースを見て愕然としました。

 さらにショックを受けたのは、何度も何度も電話をかけた末、3月12日の朝、やっと義母とつながったときです。彼女はほんの数キロ離れた場所で起きていることを、何も知りませんでした。

 家が山間なので津波にはさらされずに済みましたが、停電のためテレビを見られず、電池がないからラジオも聴けなかった。7000キロも離れている私はネット経由で津波の映像をたくさん見ているのにと思うと、悔しくてボロボロ泣いてしまいました。

 アメリカの震災報道で印象深いのは、日本人は被災しても規律を守るということがしばしば取り上げられていたことです。