2013年12月18日、韓国の鄭烘原(チョン・ホンウォン)首相は、「鉄道ストは不法ストであり、法に基づいて厳正に対応する」との対国民談話を発表した。韓国鉄道公社(KORAIL)の労組は12月9日からストに突入しており、この日で10日が経過した。労使交渉がもつれているのは、今後本格化する政府による公企業改革を巡る最初の「労使決戦」という意味もあるからだ。
12月20日は、全国の警察が労組幹部の検挙に乗り出している。ストから離脱する労組員も出始めており、政府と鉄道公社は、さらに圧力を強めている。労組は強く反発しているが、反撃の決め手には欠ける。今回は政府と鉄道公社が「原則は譲らない」という姿勢で押し切りそうだが、公企業の激しい労使対立はこれからも続くとの見方が強い。
鉄道公社の労組がストに投入したと言っても、韓国版新幹線である韓国高速鉄道(KTX)など韓国の鉄道が運行していないわけではない。ストに突入したのは労組員の40%弱で、鉄道公社は管理職や退職者、さらに部品メーカー従業員を導入してこれに対抗している。
KTX新路線の運営方式に労組が猛反発
12月18日現在で、KTXの運行本数は通常の90%、一般鉄道が65%、ソウル首都圏の鉄道が90%程度を維持している。しかし、貨物列車の運行は40%強にまで落ち込んでいる。鉄道公社労組を支持するトラック運送労組も18日に「鉄道代替輸送拒否」の方針を打ち出しており、セメント輸送など産業活動にも影響が出始めている。
韓国では労組のストは珍しくはないが、ストと言えば「賃上げ交渉」が原因となることが多い。だが、今回の鉄道公社労組のストは、鉄道公社の経営、さらには政府の公企業改革を争点とした労使の対立が原因となっている。
韓国政府と鉄道公社は、KTXの輸送力増強を目的に、ソウル中心部にあるソウル駅だけでなく、ソウル南東部郊外にある水西(スソ)駅を始発とするKTX新路線の建設を進めている。2015年の開業が目標だ。
水西駅はソウルの江南(カンナム)地域や新都市である盆唐(ブンダン)、板橋(パンギョ)などからのアクセスが売り物だ。
大企業や住宅街が過去20年間でどんどんソウル南部に移転・拡大したことを踏まえて新路線を建設し、バスや自家用車からの「鉄道シフト」を一気に加速させようという狙いだ。
新路線建設には労組も反対していないが、問題はこの運営方式だ。政府と鉄道公社は「水西駅発KTX」について、別会社で運営する方針を打ち出した。これに労組が猛然と反発したのだ。
政府と鉄道公社が別会社化を進めるのは、新会社に運営させることで運賃などサービス面での一層の向上を図るという狙いだ。さらに鉄道公社が運営する既存のソウル駅発KTXと競争させることで、相乗効果も期待できると読んでいる。もちろん、鉄道労組がさらに巨大化するのを阻止しようという狙いもあるはずだ。
政府や鉄道公社は、当初は鉄道公社が大株主となって子会社を設立して将来は民営化することを念頭に置いていたと見られる。