ヨーロッパのデパートや茶葉を扱うお茶専門店で、岩手県の伝統工芸品「南部鉄器」の急須が、当たり前のように陳列されて売られている。

 黒や茶やグレーのほか、赤、ピンク、緑、水色、青、薄紫、紫といったあでやかな色の急須も並ぶ。ヨーロッパでは陶磁器やガラス製のティーポットを使うのが普通だが、鉄製の急須もとても人気があるのだ。

 また、世界のあらゆるお茶が飲めるティーハウスはあちこちにあり、そこでは南部鉄器の急須でお茶を出すところがほとんど。

 こんなにも南部鉄器の急須が普通に見られるようになったのは、仕掛け人の情熱のおかげだ。その人とはベルギー人のポール・グエンス(Paul Geuens)だ。

 ポールは、ほんの一握りの人しか南部鉄器を知らなかったころにその存在を知った。今では、ヨーロッパの南部鉄器の急須や湯飲みの輸入販売を統括している。ブリュッセルのお茶専門店「UNAMI」でポールに詳しい話を聞いた。(文中敬称略)

南部鉄器の急須が店頭にズラリと並ぶ。青系統は色の種類が豊富だ。ヨーロッパでの人気の色ベスト3は、1位=黒(全体の50%を占める)、2位=朱色(日本的な赤と名付けている)、3位=青系統だという (撮影:特記以外すべて著者)

カラフルな色の南部鉄器で人気爆発!

 UNAMIには、ポールが輸入する南部鉄器の急須がズラリと並べられている。

 ポールが設立した商社「Ginza」から、こうして、南部鉄器が南欧や東欧も含めてヨーロッパ中の小売店500店に卸され、一般の人たちの手に届いている。またサウジアラビア、クウェート、カタールの店にも卸している。

 Ginzaを起業したのは約30年前の1985年。日本に興味を持ったのは、起業前に地元のジャパン・デコという会社で7年間働いていたときだった。