2013年11月19日、韓国の中堅財閥であるLIGグループの具滋元(ク・チェウォン)会長は「自分と家族が保有するLIGグループ企業の株式をすべて売却する」と発表した。オーナー家が全保有株式を手放して事実上グループが解体することになる。具滋元会長が拘置所からコメントを出したことも、株式売却資金を「LIG詐欺事件」の被害者への弁済に充てるというのも前代未聞の決断だった。
「狭い部屋に1人で座って、深い苦悩の時間を過ごした。投資家の方に対する被害補償とLIG損害保険の成長のためには、株式の売却以外には代案がなかった」
11月19日、具滋元会長はこんなコメント発表した。「狭い部屋に1人で座って・・・」というのは、何の意味か。同会長は実は今、拘置所にいるのだ。「すべてを手放す」は、まさに孤独な決断だった。
一体どういうことなのか。まず、LIGグループと言っても日本ではほとんど馴染みがないだろう。大手財閥のLGにグループ名が似ているが、もともとは同根のグループだった。
大手財閥LGと同根のグループ、保険から証券、防衛関連、建設へと拡大
LIGグループの中核企業であるLIG損害保険の旧社名はLG火災海上保険だった。LG電子などを傘下に置くLGグループの傘下企業だったのだ。LGグループは、これまでも一族に事業を分離継承させてきた。そこから生まれたのが、GSグループやLSグループなどだ。旧LG火災も、LGグループの創業者の弟の家族が継承することになり、1999年に分離独立した。具滋元会長は、LG創業者の弟の長男にあたる。
その後、社名をLIG損害保険と変えたが、同社は、韓国ではサムスン火災海上保険、現代海上火災保険、東部火災海上保険に次ぐ損保業界4位だ。
LIGグループは、韓国公正取引委員会が毎年発表している「大企業集団資産規模ランキング」には入っていない。これは「保険業」の場合、各種規制の対象が「資産規模」ではなく、「資本総額か資本金」を基準とするため漏れているだけで、総資産規模は20兆ウォン(1円=11ウォン)を超える巨大グループだ。
韓国の財閥には「拡大志向」というDNAがあるのか。LIGも損保事業だけを手堅く進めていれば、今も韓国金融界で屈指の「安定経営企業」の座にとどまっていたはずだ。ところが、そうはいかない。
証券、防衛関連と領域を徐々に拡大していった。このあたりでやめておけば、というのは財閥のオーナーになったことがない一般人の発想でしかない。貪欲に拡大を目指すことこそが韓国の財閥のエネルギーだ。