ニッケイ新聞 2013年10月8日
現在、日本では結婚に際して女性が男性の名字に改める例がほとんどだ。ブラジルでも、女性だけが男性の名字を追加する場合が圧倒的に多いが、サンパウロでは近年、その逆に男性が女性の名字を追加するケースが増えてきている。
「ウーマン・リブ活動」が世界中に広まり、ニューヨークなど各地で数十万人規模のデモが発生した1960年代。ブラジルでも公共の広場で女性がブラジャーを燃やすなどのデモが行われたが、女性だけが相手の名字を付け加えることに疑問を呈する声が上がってきたのは、その時代からだ。
ArpenSP(サンパウロ州自然人登録人協会)の調査によれば、昨年は結婚する男性の25%が女性の名字を採用した。
2002年に新民法で「夫婦のどちらか一方が、片方の名字を追加することができる」と定められ、同年の9%と比べると、10年でその割合は2.78倍に増加している。
ただし、その中では男性が女性の名字を採用すると同時に、女性も男性の名字を採用するという、名字の交換を行うケースが大半だ。
9月12日に籍を入れた、薬剤師夫婦のドゥースさんの場合。ヴァネッサさん(22)、マルセルさん(28)は、最初は名字を交換することにしていたが、最終的には、夫が妻の名字を追加することを選んだ。
「それが可能だとは知らなかった。登記所で初めて知った」とヴァネッサさん。「(夫の改姓は)彼が私の家族に入ってくれたみたいな感じで、とてもいい」と言う。
マルセルさんにしてみれば、改姓は「お互いの人生への共通責任が生まれることのサイン。僕たちは対等な関係にあるんだから、僕が彼女に僕の家族の名前を与えるだけというのは意味がない」ということだとか。
技術者のウィリアン・ドゥアルチ・リベイロさん(36)の名字ドゥアルチは、妻レイラさん(23)のもの。改姓の理由は、「彼女の家族への敬意と、愛の証明」だ。
その愛の証明には身分証明、納税者証明の書類、運転免許証、パスポート、銀行カードなどをすべて変更する作業が必要だが、その手間を惜しまず「それがいい」と考える男性が増えているということのようだ。
サンパウロ州立大学教授で心理学者のルシラ・スカボネさんは、この変化が夫婦関係における変化をももたらす可能性があると指摘する。
「男性が女性より強い存在だという考え方は未だに強い。この傾向が、家庭内での関係の変化にもつながるかもしれない。これからの調査に値する」と話している。
(6日付フォーリャ紙より)
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