北米報知 2013年9月5日37号

 この夏、アイダホとモンタナを車でまわってきた。アイダホ州の観光地コーダレーンには以前、シアトルのパイクプレースマーケットで日本人のおばさんが経営していた宝という和食レストランの出店がありよく立ち寄って体調を整えた。シアトル宝のお昼のお弁当は人気があった。

 車で西部の町をまわっているとだんだんと和食が恋しくなる。旅行中は特に麺類などが食べたくなる。その店はすでに撤退していたので代わりに立派な店構えのアジア系フュージョンレストランに入った。

 日本の店名がついていたがメニューは中華と和食の混合、日本人シェフは見当たらなかった。メニューをみると、ざるそばと出ていてそれにえびのてんぷらが数匹ついてくる。お昼で16ドルは少し高いと思ったが、やはりこれだと思い注文した。妻はにぎりのセットを頼んだ。

 にぎりのシャリは酢あわせをまったくしていなくて普通のご飯のままにぎっていた。私のざるそばは30分待ってやっと出てきた。

 ざるでなく大きな白い洋食用のボールにそばでなくうどんがおさまっていて、それにそばつゆとごま油をふりかけていた。えびのてんぷらは針金のように細く衣はゴールデンブラウンだった。

 サーバーにこれはそばではなくうどんだと苦情をいうと、「シェフに聞いてきます」と席をはなれた。数分経ってもどってくると、

 「シェフは、米国人はうどんの方を好むのでこうして出して皆様よろこんでおられます」とのこと。

 そばに変えてほしいというとまた戻ってきて、「今、そばはきらせていますが茶そばならあるということです」と言ってきた。それでいいからというと更に10分ほど待って同じ白いボールに今度は茶そばがめんつゆのドレッシングで出てきた。

 多分、シェフはあまり日本料理の内容をよく知らないか適当にごまかしてきて、それが通用してきたようだ。生まれてはじめておそばを注文した米国人にとってはまちがったメッセージが頭の中にインプットされてしまうのを心配した。

 モンタナでも同じような経験をしたが、カナダのクランブルックというカナディアンロッキーのふもとの観光地に行くともっとひどい日本レストランがあり、たまたま、大阪から来ていた2人の食通女性を案内していたが、「これがおうどん?」というような代物がでてきた。