黒川清・日本医療政策機構代表理事監修

1. 20年かかった改革の中身

 前回は、オランダの医療保険制度についておさらいした。

 簡単にまとめると、方向性を打ち出した後、約20年にわたり紆余曲折を経ながらも、改革にたどり着いたということ、そして、その中身は、民間の保険もうまく活用しながらも、民間の保険者に一定の規制をかけることで「公的」な保険制度を維持しているということだった。

 今回は、そのなかでも、特に日本にも示唆があると思われる高齢化対策、そして医療ITの活用について見ていく。

2. オランダにおける高齢化の現状と対策

 日本ほどではないにせよ、オランダにおいても高齢化は進んでいる。65歳以上の高齢者数は2030年には400万人(人口の約25%)にも上るとされている。

 現在の日本は、既にこの「25%ゾーン」にある。ここからも日本の高齢化対策がいかに喫緊の課題であるかが見て取れる。さて、オランダでも、高齢化が進むにつれて、介護サービスへの需要は急激に高まり、財源・人材の確保が課題となった。

 1980年代には、増加する慢性疾患患者へのケアの在り方が注目され始め、患者本人に焦点を当てたケアが求められるようになったことから、施設ケアから在宅ケアへの転換が図られた。

 1990年代後半からは、施設外のケアを充実させ、患者ができる限り自立した生活を送れるよう支援するため、利用者本位のサービスの提供と利用者の自己責任をベースにした新しい長期ケアシステムの構築を目指してきた。

 これらの改革の基本的な流れは、2つだ。「施設から在宅へ」そして「国から地方へ」である。以下に詳しく見ていきたい。