尖閣諸島を巡る中国の挑発行為は終束する気配を見せていない。
今年8月20日付『中國新聞』によれば、中国人民解放軍系のシンクタンクで対外窓口の役割も担う「中国国際戦略学会」の軍人が今月中旬、訪中した日本の超党派国会議員団との会談で、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)について、武力行使も辞さない問題に使う「核心的利益」の対象と伝えていたことが19日、日中関係筋の話で分かった。
日本側に対し中国が尖閣諸島を「核心的利益」と直接伝えたのは初めてとみられる。
このような中国側の態度は、どのような国家戦略、軍の作戦教義を背景として生まれているのであろうか。中国側の文献により、その概要を探る。
1. 中国の軍事地理的地位
軍事力に転換しうる潜在的なパワーの1つとして、地理的要素がある。
この点について、中国の軍事戦略家は綿密な分析を行っている。中国は自らを、国土の一面のみが海に面している「単海岸国家」と位置づけ、その特色を、米国のように2つの海岸に面した「双海岸国家」のような経済発展上の便益を受けることは困難であることにあるとしている。
特に中国のように国土面積が広大な国家の場合は内陸部の発展には困難が伴うと指摘している*1。
中国は科学技術力により海洋が征服される以前は、伝統的に三方を陸地に囲まれた大陸国家であり、陸上強国であった。しかし、世界が海洋時代に入り、制海、制空権を海上強国が支配した時代になってからは、単なる陸上強国に甘んじていることはできなくなった。
中国にも海岸線が存在する以上、海洋型国家にもならねばならず、中国は大陸と海洋両面の大国とならねばならなくなったとしている*2。
*1=刘建军『论军事潜力(軍事的なパワーとは何か)』(解放军出版社,2012), p. 505.
*2=同上、p. 527.