米アマゾンの独流通施設で労働者いじめか、警備会社との契約を解除

アマゾン・ドットコムは今年2月、ドイツにある同社の流通施設で警備員が外国人期間従業員にいやがらせやいじめなどを行っていると指摘されたことを受け、警備会社との契約

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 ただ、このルポの圧巻は、外国人派遣労働者の労働条件の劣悪さよりも、彼らの宿舎を見張っていたセキュリティー会社の実態だった。

 かいつまんで言うと、黒ずくめの、スキンヘッドの筋肉隆々の男たちが、我が物顔に宿舎を歩き回り、あるいは、ドアの外でたばこを吸いながら、鋭い目つきで労働者を威圧している。誰でもこの状況に置かれれば、怯える。

 案の定、テレビでこのシーンを見た多くのドイツ人が唖然とした。彼らは、ドイツは福祉大国であり、外国人に対しても十分過ぎるほどの社会福祉を行っていると信じているので、現在進行形の外国人“搾取”とも言える光景に、深いショックを受けたのだ。

 しかも、この監視の男たちは、怖すぎる。強制収容所を想像してしまう。ルポの中の、このシーンの画像は特に乱れていた。よく撮ったものだと思う。

ダイムラー・ベンツや大手スーパーも派遣労働者を“搾取”

 このアマゾンの“奴隷問題”のほとぼりがいまだ冷めやらぬ6月、派遣労働が再びドイツで話題になった。

 アマゾンだけでなく、スーパーマーケットの巨大チェーン「カウフラント」や、自動車の世界的企業「ダイムラー・ベンツ」に、派遣労働者の扱いが不当であるとして、検察が捜査に入ったのだ。

 ちなみにカウフラントでは、派遣労働者を長年の間、倉庫で極端に安い賃金で働かせていたとされ、それによって、膨大な額の社会保障費を回避した疑いがかかっている。

 ベンツでは、派遣労働者は正規労働者の3分の1しか賃金を貰っていなかったという。ただ、派遣労働者の場合、労働者と雇用者が契約を結んでいるわけではなく、その間に派遣会社が入っているので、その雇用契約は複雑だ。言い換えれば、抜け道はたくさんあると言える。

 ドイツのたいていの派遣労働者の賃金は、同じ仕事をしている正規雇用の労働者と比べて、平均して20%から25%安いという。SPD(社民党)は、以前より「同じ仕事に同じ賃金」を主張し、派遣労働者の権利拡張に力を注いできた。

 一方、緑の党と左翼党は、派遣という制度自体を廃止すべきだという意見。それに対し与党は、労働条件を改善して、派遣労働者の権利を守りつつ、派遣労働システム自体は継続という姿勢だ。

 2012年の11月からは、旧東独地域では時給7.5ユーロ、旧西独地域では時給8.19ユーロが、最低賃金として法律で定められた。つまり、派遣労働者も、これ以下の賃金で雇うことは適わなくなった。