米有力紙「ワシントン・ポスト」をアマゾン・ドット・コムの創業者が買収するというニュースは韓国でも大きな話題となった。その韓国では、かつての名門紙「韓国日報」がすったもんだの大混乱に陥っている。
「記者の士官学校と呼ばれた韓国日報はどこへ行く」――。
アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)がワシントン・ポストを買収するというニュースを韓国の有力紙である「中央日報」は国際面のほぼ1ページにわたって報じた。同じ日付の同紙の社会面では、こんな見出しの記事がトップになっていた。
というのも韓国日報のオーナー会長である張在九氏(チャン・ジェグ=65)が8月5日、ソウル中央地検に背任などの容疑で召喚され、そのまま拘束されたのだ。
この4日前の8月1日にはソウル中央地裁が韓国日報に対して財産保全処分を下した。オーナー会長の拘束と財産保全命令ということで、韓国日報は経営上、「重大な危機」に直面することになった。
労組が退陣要求、経営側は編集局を封鎖する大混乱
韓国日報は春以降、会長など経営側と労組が激しく対立して混乱が続いていた。
もともとここ数年、韓国日報の経営は急速に悪化していた。新聞事業の不振で1999年に事実上の銀行管理に入り、資産売却やリストラを通して2007年にいったん経営は正常化した。しかし、その後も新聞販売や広告の減少が続き、債務超過の状態が続いていた。
さらにオーナー会長の背任や横領容疑が強まり、労組は退陣を求めていた。これに対して経営側は編集局をロックアウトしてこれに対抗した。
6月半ば以降、編集局内に入れない記者が会社があるビルの1階ホールに座り込む異常事態となっていた。新聞発行は管理職などの手によって続いたが、通信社電ばかりで通常発行とは程遠い状態だった。
編集局の封鎖を解くように求めた労組の仮処分申請が認められて、7月9日に25日ぶりに記者たちの出入りが自由になったが、混乱は続いた。労組、記者有志などが、オーナー会長を背任や横領で告訴、さらに新聞発行を続けるために裁判所の管理下で更生手続きに入ることを求めたからだ。
財産保全処分が出たことでオーナー会長は事実上、経営権を失った。検察の捜査を受けて拘束されたことで、今後は裁判所の管理下で生き残りを目指すことになる。