つまり、「札幌で連泊する客を増やすことが、かえって旭川市への誘客につながるのではないか」といった推測も、成り立つかもしれない。

 さらに、よりミクロな位置情報データを取得・分析することも可能だ。南関東居住者と、北海道居住者で、位置情報を比較した表がある。例えば「美幌峠」は、南関東からの旅行者には認知されていないが、北海道居住者では7位にランクされている。

釧路、阿寒、根室、川湯、屈斜路エリアで冬に位置登録された場所

 夏の美幌峠からの景色は最高だという。こうした、北海道居住者は利用するが、南関東旅行者が知らない観光スポットが存在することも把握できる。

 「誘客のために、目標を立て、施策を掲げている自治体は数多くある」と加藤さんは言う。ただし、今まではその手法となると、具体的根拠に欠けるため、感覚値や今までの経験則に頼らざるを得なかった。しかしデータがあれば、新たな仮説を立て、検証することが可能になる。埋もれた観光資源を生かすためのヒントになるかもしれないのだ。

位置情報データから旅行者の足跡を抽出するには

 「じゃらんnet」の利用者は、2012年度末の段階で、年間延べ6020万人に達するという。これに、ゲームユーザーによる位置情報登録回数が18億回(2013年5月時点)を超える位置ゲームのロケーションデータをかけると、そのデータ容量の大きさはとっさに思い浮かべられるものではない。こうした文字どおりの「ビッグデータ」を、同社ではどのようにして、取得・分析しているのだろう。

 まず、「じゃらんnet」のデータから、宿泊数やグループサイズなどの旅行者属性が分かる。沖縄を例に取れば、「リピート3回目までは本島を訪れ、4回目以降は離島を訪れる」といった傾向も、ある程度把握できるだろう。