ソリにもいろいろな決まりがあり、例えばソリのスベリ面(ブレード)は、焼入れをしてはいけないことになっているとか・・・。
全日本大会で下町のボブスレーが優勝
細貝社長は言う。「私がやりたいことは地域と一緒に発展するための経営です。ボブスレーのそりを作ろうと声をかけたら、60人ほどが賛同してくれました。そりの部品を180枚の部品図面にバラして、『この部品をやりたい人』ということで募集しました。
重要なのは、代金を払ってくれる人はいないから、材料費持ち出しのただ働きだということ。得られるのは名誉だけ。もし誰も手を挙げなければ、最後はマテリアルが引き受けるつもりでした。

しかし大田は良い町です。結局約30社が手を挙げてくれました。そりの開発を通じて自分たちが持っている設備をシェア(共有)して、一緒にものづくりができる環境が作れればいいなと考えています。世界が注目する冬季オリンピックで、大田区の町工場が作ったそりでボブスレーに優勝したということになれば、世界中に大田区の技術をアピールすることができます」
「残念ながら炭素繊維でボディーを作れる企業は大田区にないので、滋賀県にある童夢カーボンマジック(DCM、現・東レ・カーボンマジック)の奥明栄社長(現・取締役開発部長)に協力してもらっています」
2012年12月のボブスレーの全日本大会で、大田のボブスレーに乗った女子チームがブッチ切りで優勝し、大いに期待を持たせてくれた。
いずれにせよ細貝社長は地域の技術力を高め、将来は航空産業の分野に生かしたいと考えている。
加工設備を買えなかった創業の頃
マテリアルは細貝社長が26歳の1992年に東京都大田区で創業した。非鉄金属材料の販売と精密加工を手がける町工場である。
「金属材料商社のA社にいて、営業をやっていました。22歳で結婚したんですが、そのときにはカミさんの方が給料が高かった。(笑)ちょっと悔しくて、『30歳までに金持ちになろう(言い換えると「社長になる」・・・)』と思いました。
A社で営業しているときに、顧客の要望に応じて自社で加工した方が顧客も喜ぶし、会社も儲かるんじゃないかと進言したが、なかなか受け入れてくれませんでした。だとすれば、独立し、自分で材料販売と加工をやる会社を始めようと思いました。