韓国、14兆ウォン規模の経済対策を発表

企画財政相時代の姜萬洙氏〔AFPBB News〕

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 しかし、「ウォン安政策」は批判も浴びた。

 急速なウォン安のあおりを受けて物価が上昇した。エネルギーだけでなく、食品や生活物資の輸入依存度が高い韓国では、物価上昇は特に庶民経済を直撃した。「ウォン安政策は一部の大企業だけを潤し、庶民を犠牲にしている」との声が高まったのだ。

 力を持ち過ぎた姜萬洙氏への政権内での牽制もあり、同氏は就任1年で企画財政相を退任する。「747政策」も事実上、大幅修正を迫られた。

 とはいえ、李明博前大統領の姜萬洙氏への信頼は揺るがなかった。2011年、姜萬洙氏は、国策銀行の産銀金融持ち株会社トップに就任する。ただの「論功行賞人事」ではなかった。李明博前大統領が託したのは「メガバンク構想」だった。

「メガバンク構想」を託され産銀金融持ち株会社のトップに

 「韓国にはサムスン電子や現代自動車のようなグローバル企業はあるのに、どうして銀行が育たないのか」――。

 韓国の経済界ではかなり以前からこんな不満の声がある。李明博前大統領は、KDBを中心にした巨大銀行を設立することで、この課題を一気に解決しようと豪腕の姜萬洙氏を産銀金融持ち株会社に送り込んだ。

 1997~98年の通貨・経済危機(IMF危機)を機に、韓国では銀行業界の再編が劇的に進んだ。都市銀行が半分に減り、その過程で巨額の公的資金が投入された。

 韓国の大手銀行であるウリィ銀行は、経営不振に陥った韓国商業銀行、韓一銀行、平和銀行などを合併して公的資金を投入して設立された。政府は公的資金を出資に転換した。ウリィ銀行を傘下に持つウリィ金融持ち株会社の株式の60%近くを今も政府が保有している。この金融機関の民営化(政府保有株売却)は李明博政権の大きな課題だった。

 他行との合併や市場での株式放出などさまざまなアイデアが浮かんでは消えた。というのも一時は時価総額が10兆ウォン(1円=12ウォン)を超えており、合併も株式売却も容易ではなかったのだ。

 そこで登場したのが姜萬洙氏だ。同氏は、産銀金融持ち株会社を民営化し、ウリィ金融持ち株会社と合併することで巨大銀行(メガバンク)を設立しようと動いた。さらに別の政府系銀行も合併して、資産規模が500兆ウォンを超える銀行を設立しようという構想だった。