日本の住宅はこのところ急速な進歩を遂げている。背景には2回の大きな震災に見舞われたことがある。耐震性を向上させたり、徹底的な省エネ化を図ったりしながら、夏でも冬でも快適で長持ちしかつ光熱費の安い住宅が実現し始めている。

 ここ10年で大きく進歩してきた住宅技術を追った。第1回は地震への対応。大和ハウス工業の総合技術研究所で振動研究チームを率いる山下仁祟・振動研究チーム長に聞いた。 

阪神・淡路大震災を機に、地震対策システムの研究開発が加速

大和ハウス工業総合技術研究所の山下仁祟・建築技術研究室鋼構造・振動研究グループ・振動研究チーム長

川嶋 東日本大震災によって耐震住宅への関心が非常に高まったと思いますが、これまで耐震住宅はどう進化してきたのでしょうか。

山下 1つの大きなターニングポイントは、1995年の阪神・淡路大震災です。耐えられると思われていた建築物が、かなり崩れました。

 そこで、もっとしっかりと分析して、いろいろな設計をしていかなければいけないという流れができた。またその時期にはパソコンが普及し、設計のための計算がしやすくなったことも背景にあります。

川嶋 大和ハウス工業ではそれを契機にどう変わったのでしょうか。

山下 いま私たちのチームでやっているのは、「DAEQT(Daiwahouse Anti Earth Quake Technology、ディークト)」という地震対策システムの研究開発です。

 ディークトには「耐震」「制震」「免震」という3つの技術があり、2006年に「xevo(ジーヴォ)」という住宅ブランドを発売した時に、これらの技術を統合的に提供できるようにしました。

 これは、阪神・淡路大震災を経験して、大和ハウス工業としてもっと地震に強い家、お客さまに安心していただける家を造りたいという流れから、それまで耐震構造と言われるものだけで設計されてきたものに、さらに何か加えられないかということで生まれたものです。

川嶋 でも阪神・淡路大震災では、住宅メーカーの家は丈夫だったということが証明されたんですよね。