昨年9月、文部科学省による「グローバル人材育成推進事業」に42の大学が採択されました。

 この事業は、若い世代の内向き志向を克服し、国際的な経済・外交の舞台で積極的にチャレンジできる人材を育成するため、平成24(2012)年から5年間にわたり趣旨に適った取り組みをする大学へ財政支援するというものです。

 1校当たりの補助金は最大で年間2.6憶円と、送り出し留学の促進に関する国家事業としては、大規模なものとなっています。いよいよ政府も本腰を入れ始めたということでしょうか。これをきっかけに社会総がかりでグローバル人材の育成が推し進められることを期待したいと思います。

 そこで、2回にわたり当事業における各大学の構想を見ていきたいと思います。

各大学が掲げるグローバル人材の定義はさまざま

 ひとくちにグローバル人材と言っても、各大学が文科省に提出した事業企画書に謳われているその人材像はさまざまです。

 例えば、東京医科歯科大の考える人材像は以下のようなものです。

「成熟国家の日本が、生命科学研究や国際保健/医療政策、国際協力/医療観光等の分野において世界を支え牽引していくために中心的役割を担うグローバルヘルスリーダー」

 背景には、日本は国連拠出金では米国に次いで2位であるにも関わらず、世界保健機構(WHO)における日本人スタッフ数は他の国連機関同様にかなり低い状況があります(日本が払っている分担金の額と比較すると、日本人の国連職員は本来あるべき数の4分の1程度です)。

 また、現在、日本では医薬品・医療機器の分野でも輸入超過の状態ですが、その基盤となる基礎研究における国際競争力の向上が急務です。

 2008~2011年の4年間に世界の主要医学雑誌に掲載された論文数を見ると、基礎研究分野では4位と、2003~2007年を集計した前回調査の3位から順位を下げました。また臨床研究分野ではさらに深刻で、前回の18位から25位へと大きく順位を下げています。

各大学が考えるグローバル人材像
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 これらは英語運用力、情報発信力の不足に大きく起因しているとともに、海外研究留学希望者数の減少も将来の競争力を考えると憂うべき状況です。

 そして、東日本大震災の際には他国のボランティア医療スタッフから多大なる支援を受けたように、日本も他国が医療を必要とした時に積極的に国際協力に関わるべきで、そのためにも高度な英語力のもと質の高い災害医療を行える人材の育成が必要となります。

 さらに近年アジア諸国の一部では医療観光産業が成長してきていますが、日本は高い医療サービスを持ちながら大きく出遅れています。この状況を打破するためにも英語によるコミュニケーション力を高める必要があります。