日本のメディアではあまり取り上げられていないが、ここ数年猛烈な勢いでシェアを伸ばしてきた韓国の現代自動車が窮地に陥っている。

 原因は、米国市場での燃費性能の水増しだ。同国では同社の対応に不満を持つ消費者が集団訴訟を起こすなど、事態が深刻化している。

 不正に厳しい米国市場特有の現象だが、これは視点を変えると日本の消費者にも同じ問題が当てはまるのではないだろうか。

シェア拡大を焦り、禁じ手を犯した現代自動車

 外電等々で伝わった現代自の燃費水増しの概要は次のようなものだ。日本経済新聞は特集記事で以下のように報じている。

 現代自が傘下の起亜自動車とともに販売した中型セダンなど13車種、約90万台について、燃費性能を水増ししていた事実が、米環境保護局(EPA)の調査で発覚した。燃費性能は最大で燃料1ガロン当たり6マイル(9.6キロ)が水増しされていた。

 現代自側は誤りを認め、ユーザーに対して過去にさかのぼって余分に払った燃料代を支払うことを決めた。

 日本車のシェアを駆逐し、かつ欧米メーカーの牙城を切り崩そうと、現代自が焦りを感じていたのではないか、などと日経や外電は分析している。

 米国では、ニューヨーク市など一部の大都市を除けばクルマは日常生活の足として欠かせない存在。また、リーマン・ショック後の不況、はたまたガソリン価格の上昇傾向とも相まって“燃費性能”は自動車販売での重要なファクターになっている。

 過剰とも言えるほどの保証サービスを付帯して新車を販売していた現代自については、「やり過ぎの感は否めなかった」(米系証券アナリスト)との声も根強かっただけに、同国消費者の怒りは凄まじかった。

 かつて日本メーカーも同様の問題を抱え、訴訟に発展した経緯があるだけに、現代自は当局の指摘から素早く動いた、と見ることもできる。

日本のユーザーは寛大すぎる

 一連の現代自の問題をチェックするうち、私は首を傾げた。米国の消費者と同じように、日本のユーザーも怒りを露にすべきでは、との疑問が湧いたためだ。