最初に、右の写真を見ていただきたい。横断歩道の横にあったはずの、自転車が通る横断帯。これが消されている光景を見たことはないだろうか。
実は、この「自転車横断帯」、今後段階的に廃止されてゆく運命にあるのだ。その背景には、日本の自転車政策が、「自転車は原則車道」という方向に「再転換」しつつあることがある。10年後、日本の道路風景が少しだけ変わっているかもしれない。今回は、このことについて紹介したい。
始まりつつある自転車通行環境の改善
言うまでもなく自転車は健康にも環境にも優しい乗り物である。大都市ならば満員電車に揺られるよりも自転車で移動した方がはるかに健康的だし、地方ではクルマ利用よりも環境負荷・経済的負担が少なくて済む。
道路の通行効率や駐車スペースの面でのメリットも無視できない。同じ100人が移動するのに、クルマは自転車の何倍ものスペースを必要とする。ちなみに道路交通センサスによると、自家用車1台あたりの平均乗車人数は1.31人にすぎない。
一方、自転車が加害者になる事故や、自転車が安全かつ快適に通行する環境が整っていないことが問題になっている。
この背景には、自動車の通行量の増加を受けて、1978年に、自転車の歩道通行を認めたことがある。本来、自転車は道路交通法で「軽車両」と位置づけられており、車道を走るものである。それにもかかわらず、自転車の歩道通行が当たり前になってしまい、歩道は歩行者が安心して歩ける空間ではなくなってしまった。自転車利用者も、歩道をゆっくりと走るほかなく、自転車本来のスピードが犠牲にされてきた。