『戦争は人間的な営みである』という本が並木書房から11月に発売された。著者は石川明人さん、北海道大学文学部を卒業し同大大学院博士課程を経て、現在は北大で宗教学・戦争論の助教授を務められている。
生まれは昭和49年というのでまだ30代だが、筆致は精錬されていて、日頃、世の中を飛び交う稚拙な日本語に嫌気がさしている皆様にはぜひ手に取っていただきたい1冊である。あまり日本語にこだわりを持たない方には、この点をご理解いただけないかもしれないが・・・(ちなみに私は多くの人が「感動した」と評価するベストセラー本を買っても、内容以前にその文体に共鳴できないことが多い)。
愛情や真心があるから人間は命をかけて戦う
この本の魅力は、使用語彙に対するこまやかな配慮だけではない。もちろん中身の充実がある。序章における<戦争は『善意』によって支えられている>という言葉に、まずは深く頷いた。
誰もがなんとなく気付きながらも、考えることそのものを忌避する傾向があるが、人を戦争に駆り立てるのは、非常に強い「正義感」や「愛」である場合が多い。同書では次のように述べている。
<何らかの意味での『愛情』あるいは『真心』があるからこそ人間は命をかけて戦うことができてしまう、戦争を正当化できてしまうのだ。そこに悲劇の本質があるのだと考えるべきである。>
そして、<私たちは、人間の持つ、そうした皮肉・逆説を、正面から見据えなければならない>と。
こうした言葉を紹介すると、必ず「人殺しを肯定するのか」などといった声が上がりがちであるが、その風潮こそが日本人が真摯に戦争と向き合えない土壌を作り、思考停止を招いている。そのことに、むしろ危機感を持つべきだろう。