「失敗したから、もう挑戦しない!」
子供がこう言ったらどうだろうか? 親であれば、「失敗から学ぶことがある。もう一度頑張りなさい」と言うだろう。しかし、日本の既存システムは、失敗を許さない。
厚生年金基金を解散に追いやるAIJ事件
今年の年金問題における最大の話題は、AIJ事件。この事件は12月5日に初公判となり、浅川和彦社長は罪状を認めた。この事件はとうとう厚生年金基金を解散へ追いやっていく。
実体のない運用に、運用結果が良いという表向きの表示を信じて、多くの年金基金が投資した今年最大の経済事件だ。
この問題は、日本経済と金融市場が停滞するなか、年金の運用パフォーマンスが伸びず年金財政的に厳しくなる環境で起こった。
年金基金がとんでもない運用機関にお金を預けることが生み出した悲劇である。結果として、ただでさえ余裕がない厚生年金基金を、逃げ場のないところに追い込んでしまった。
AIJ問題が詐欺であることは間違いない。しかし、多くの年金関係者がAIJ問題を怪しいと思ってきた。それにもかかわらず、勉強不足の年金基金理事会・事務局が、見かけの収益安定性に目がくらんで引き起こした事件とも言える。
残念ながら、被害者とされている基金理事会・事務局に心からの同情はできない(年金受給者の方は別である)。
一方で、臭いものには蓋をしろという視点で、AIJ問題をきっかけに厚生労働省が厚生年金基金(約440万人が加入し、残高は約17兆円。総合型が約8割なのでこのあと総合型を中心に議論)を今後10年で一律に解散、または別年金制度へ移行させようとしている。
確かに、半分近い厚生年金基金が国から預かっている公的年金(代行部分)を棄損していることは重大な問題である。一方で、半数は公的年金を棄損せず運用していた。