葬儀も埋葬の仕方も多様化してきている中、花火を上げて故人を見送る人たちがいる。しかも、花火に遺灰を混ぜて夜空にまくというから驚かされる。

 集まった遺族や友人らは、シャンペングラスを手にし、故人の好きだった音楽をバックに遺灰を詰めた花火を見つめる。そんな日本では到底考えられない「花火供養」が、イギリスで少しずつ広まりつつある。

出席者全員が忘れられない夜を過ごせる

Heavens Above Fireworks社のホームページ。同社は起業した翌年の2005年に、国内のビジネス賞を2部門で受賞した。ペットの遺灰も受け付けている。花火供養の注文1回ごとに、チャリティー団体に寄付している ©Heavens Above Fireworks Limited(以下の画像もすべて同社提供)

 ロンドン近郊のエセックス州エッピングにあるHeavens Above Fireworks社(ヘブンズ・アバブ・ファイヤーワークス社)は、イギリス国内で花火供養を請け負っている。2004年に設立した。

 同社サイトで紹介している花火供養のビデオを見たとき、目を疑った。競馬が大好きだったという女性が、死後に競馬場で花火供養をしてほしいという願いを残した。遺族は遺言通りに、同社で花火供養を企画した、その模様をテレビ番組が放映したのだった。

 故人の遺志ではなく、遺族が企画する場合もある。10代の若さで亡くなった少年の両親は、息子が迎えるはずだった誕生日に、同社で花火供養を企画した。少年の遺灰は花火とともに空に舞い散った。親族や友人220人が集まるという盛大な催しになった(花火供養の様子はこちらから)。

 花火供養は葬儀後、日を改めて数週間後、数カ月後に行う。サイトには、同社に花火供養を依頼した人たちからのコメントがズラリと挙がっている。

 「花火は最高でした。出席者の誰もが忘れられない夜を過ごしました」「妻の人生をとてもよく表現してくれたと思います」「亡くなった主人も、あの花火を気に入ったに違いありません」「スタッフの心遣いは最初から最後まで、本当に素晴らしかったです」「同社のサービスは、ほかのみなさんにも絶対にお勧めします」

川辺で、実際に花火供養を行っている様子。参列者たちが手前に見える(紹介ビデオ "Eddie's Spectacular Liverpool Farewell." 2012年2月18日より)

 「わが社では、遺灰を花火に混ぜる供養だけをご提供しています。類似のサービスはいろいろ知っていますが、花火で散骨することに特化しているのは世界中を探してもわが社だけです」

 そう強調するのはファーガス・ジェイミーソン(Fergus Jamieson)同社経営責任者だ。花火供養というと、遺灰を花火に混ぜずに花火だけを観賞する会をオーガナイズしてくれる企業はたくさんある。私は、同社で遺灰を花火に混ぜる顧客はごく一部で、多くが遺灰なしで花火だけなのではと思って、氏に問い合わせたのだ。