タイ駐在歴30年の日系中小企業社長が、「在タイ日系中小企業は日本政府の支援対象でもなく、タイ中小企業支援の対象でもない。狭間にいるので辛い」と愚痴をこぼす。
マレーシア日本商工会議所(JACTIM)の中小企業委員会役員らも口を揃えて言う。「日々資金繰りなどに追われず、安心して事業やモノ作りに専念したい」と。
これには致し方ない面もある。従来、日本政府による中小企業向け海外展開支援のコンセプトは、産業空洞化を危惧した消極的支援であったからだ。
つまり、親会社の海外拠点シフトなどで現地生産拠点を作らざるを得なかった中小製造業が主な支援対象であって、「やむを得ず」というキーワードが施策・制度の根底にあった。
拡充されている海外展開支援施策と資金サポートの取り組み
しかし最近、政策的には積極的な海外事業支援へと転換してきている。
今年6月21日の通常国会で成立した「中小企業の海外における商品の需要の開拓の促進等のための中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律等の一部を改正する法律(中小企業経営力強化支援法・PDF)」が8月30日に施行された。
この法律では、中小企業の経営力の強化を図る目的で、1. 中小企業の支援事業を行う者を認定し、その活動を後押しするための措置、および2. 中小企業の海外展開を促進するため、中小企業の海外子会社の資金調達を円滑化する措置を講じている。
従来からJETROや中小企業基盤整備機構等を中心とした海外経営相談は一般によく知られるところだが、最近は資金面の支援制度が拡充してきている。
海外展開に伴う資金調達に対する支援措置として、中小企業新事業活動促進法等に基づく認定を受けた計画に従って事業を行う中小企業に対し、従来からある海外展開資金等に加えて、日本政策金融公庫の債務保証業務等も拡充されている。
具体的に、現在実施されている主な政策的な取組みを列挙すれば、以下の通りだ。
●海外展開資金(取扱機関:日本政策金融公庫)
- 日本政策金融公庫 中小企業事業
- 日本政策金融公庫 国民生活事業
この制度融資を受けるには、経済の構造的変化に適応するために海外展開をすることが経営上必要である。