東京国際フォーラムで10月30日と31日に開かれたデジタルマーケティングの国際カンファレンス「ad:tech Tokyo 2012(アドテック東京)」。
基調講演リポート第5回で紹介するのは、IPGメディアブランズのチーフストラテジーオフィサー ジム・エルムズ氏の「メディアの新たな定義:ブランドコミュニケーション、そしてセールスにもリアルタイムに活用できる手段」をテーマとした講演。
このセッションにはジョンソン・エンド・ジョンソン コンシューマーカンパニー社長の柴田透氏、UM社チーフパフォーマンスオフィサーのヒュー・グリフィス氏も参加した。
エルムズ氏はまず、データ分析の重要性について指摘。消費者の間で何が起きているか、施策の何が成功し何が不十分なのかをリアルタイムに理解するうえで役に立つのみならず、予算を最大限活用し、ROI(投資利益率)を高め、KPI(重要業績評価指標)を把握するためにデータ分析は必要だと述べた。
クロスチャネル分析には課題が多い
グリフィス氏はまず、データ分析に関する定義を確認しなければならないと述べた。人によって異なる解釈があるため、混乱の元となる危険性があるとする。
マーケティングの観点から同氏は、2つの領域を規定した。1つ目はチャネルごとの深い理解を得るための分析。2つ目は、クロスチャネルの統合化されたレベルのもの。たとえば、テレビが検索に対してどんな影響を及ぼしているのか、または印刷媒体がどれだけウェブサイトのアクセス件数を増やすことができるのかという分析だ。
チャネルごとの理解を深めることについて、グリフィス氏は特にデジタル分野においては掘り下げた分析が広く行われているとの認識を示した。「リアルタイムフィードバックによる最適化の判断ができる」からだ。一方、クロスチャネルの統合コミュニケーションの計測については十分ではなく、「まだまだ可能性を追及する余地が残されている」との見解を示した。
理由は、データの制約があるからだという。多くの異なるチャネルから情報を収集しなければならず、さまざまな分析を通じて相互関係を理解するには時間がかかる。より早くデータが得られるような改善が行われてはいるが、現状では2週間ぐらいのタイムラグがあるという。
それでも、グリフィス氏は2つ目のクロスチャネル分析のほうがブランドに対してより大きなインパクトを与えると指摘。「すべてのマーケティングチャネルが全体としてどう機能し影響し合っているかがわかれば、それを最適化するための意思決定ができるようになる」と述べた。