高齢者世帯の増加に伴い、今、シニア向け食関連市場が熱い。宅配ビジネスや移動販売、さらにはスーパーマーケットやコンビニエンスストア、百貨店でも高齢者向けに商品や業態の開発が進んでいる。

 一方で、高齢化社会では高齢者単身世帯の増加やひきこもり、近隣に店がない「食の砂漠化」、商店街の衰退などの問題を抱えている。

 小売業がシニアシフトする中、業界のこれらの試みは、本質的な問題の解決に繋がっていくのだろうか。課題を見ながら、個食化に対応した商品開発や、宅配ビジネスなどのシニア向けのソリューションの動向を追った。

小売店が続々とシニアシフト

 65歳以上の人口が占める割合は、2011年時点で23.3%。2030年には3人に1人が65歳以上になる。そんな「超高齢社会」へまっしぐらの日本各地で、小売店のシニア向けの業態開発が進んでいる。

 大手スーパーのダイエーは2012年3月、東京都北区にシニア向け店舗「ダイエー赤羽店」をオープンした。食べ切れるような少量の野菜や総菜、調理の不要な魚の切り身などを揃えた。また総菜や介護用品、ペット関連商品などの売り場を広くとり、商品名や値札も大きめの文字にするという徹底ぶりだ。

 ダイエーのニュースリリースによると、ダイエー赤羽店は近隣居住者の4割が50代以上のシニア層という商圏にある。「元気な団塊世代やアクティブシニア向けの品揃えを充実させる」ことで集客を促す狙いだ。

 イオンも、2011年12月、埼玉県越谷市にある「イオンせんげん台店」をシニア向けに改装した。食料品は少量パックや和食中心だ。衣料品も、シニアの体形向けにきめ細かいサイズ調整ができ、好調なスタートを切っている。

 イオンはさらに、2012年4月、千葉県船橋市に大型ショッピングセンター「イオンモール船橋」をオープンさせた。アクティブなシニア層に向けて、旅行用品やワイン、輸入食品などの専門店を強化。加齢に対応した衣料や眼鏡売り場、個食化に対応した食品、さらには保険などの金融サービスに至るまで多角的な切り口でシニアシフトを進めている。