2010年5月27日、日本経団連の会長が御手洗冨士夫氏から米倉弘昌氏(住友化学会長)に交代する。民主党政権下で自民党べったりだった経団連の存在感は薄らぐばかりで、財界の存在意義も問われている。御手洗経団連の功罪を探った。

まるで卒業生を送る会

 「いや~俺はあの組織では絶対に務まらない。断言できるよ」と打ち明けるのは筆者の知人で財界担当の記者だ。

キヤノン、大分の子会社2社で非正規従業員1100人削減へ

2010年5月27日に退任する御手洗冨士夫日本経団連会長〔AFPBB News

 以下は彼から聞いた話である。

 5月18日夕、東京・大手町の経団連会館国際会議場で2期4年の任期満了を迎える御手洗会長を「送る会」が開かれた。会の運営・企画は経団連の若手職員。今井敬氏(旧経団連9代会長)は固辞したそうだが、職員による送る会は豊田章一郎氏(旧経団連8代会長)時代からの慣例だという。

 会場入り口には部門別に受付があり、出席のチェックが入る。240人あまりの職員のうち、出張などどうしても都合がつかない人以外、ほとんどの職員が参加しているようだ。会場正面にはメインステージが設けられ、そのバックに大きく「御手洗会長ありがとうございました」とプロジェクターで文字が映し出されている。前方には御手洗会長4年間の歩みをまとめた年表がパネルになって飾られている。

東京大手町の日本経団連会館(撮影・前田せいめい)御手洗氏が在職記念に送ったフクロウの像(撮影・前田せいめい)

 寿司やそばなど和洋中のプレートに加え、御手洗氏の好物の大福餅も並んでいる。在職記念に御手洗氏が経団連会館に寄贈したフクロウの像にちなんで、フクロウをかたどった花飾りがひときわ目を引く。

 開始15分前。全員が整列してメイン扉前からステージまで花道をつくった。定刻に登場する主役を結婚式の新郎新婦入場のように拍手で出迎えるためだ。

 クライマックスは御手洗会長が就任した2006年5月以降に入局した若手職員約20人による「エール」であった。御手洗会長に向き合って一列に並んだ若者たちは、右サイドが「御手洗会長」と呼びかけると、すかさず左サイドが「ありがとうございました」と声を出す。次は左側から「私たちは」と発声があり、右が「政策集団を目指します」と応じる。みんな真剣な顔で声を張り上げている。まるで小中学校の在校生による卒業生を送る会のようだ。

 直立不動で聞いていた御手洗氏は、エールに応えて「日本経団連には世界一の政策集団になってもらいたい」と持ち上げ、さらにこう結んだという。「長嶋茂雄氏に倣って言えば、日本経団連は永遠に不滅です」