新興市場で不祥事が止まらない。東京証券取引所の新興市場「マザーズ」に上場する半導体製造装置メーカー、エフオーアイ(神奈川県相模原市)が上場時に売上高を約10倍に水増ししていたことが発覚。「性善説」に基づく審査体制の限界を露呈した格好だが、エフオーアイは氷山の一角との声もあり、新興市場の信頼確保が大きな課題となっている。

東証だけでは見破れない

東証・斉藤惇社長/前田せいめい撮影「東証だけでは見抜けない」 (資料写真)(撮影・前田せいめい)

 「本格的に(粉飾決算を)仕組まれたら東証だけでは見抜けない」。東証の斉藤惇社長は2010年5月18日の記者会見でエフオーアイ問題についてこう語り、あっさりと審査体制の限界を認めた。

 証券取引等監視委員会は5月12日、エフオーアイが売上高を約100億円水増ししているとして、金融商品取引法違反(有価証券届出書の虚偽記載)容疑で本社と社長宅を強制調査。東証は18日に1カ月後の上場廃止を決定した。信用悪化で業務継続が困難となった同社は21日、東京地裁に自己破産を申請した。負債総額は約92億円。

 エフオーアイは2009年11月、マザーズに上場したばかり。わずか6カ月での上場廃止決定はもちろん最短記録だ。保全管財人を務める松田耕治弁護士によると、上場に先立って東証に提出した有価証券届出書には2009年3月期の売上高は118億5000万円となっていたが、このうち110億円が水増しだった。水増しは上場の数年前から始まっており「壮大なスケール」(同弁護士)の粉飾決算事件だ。

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ライブドア事件を契機に東証はマザーズの上場基準を厳格化したが・・・〔AFPBB News

 エフオーアイの売上高は全額が海外。売上伝票の形式は整い、取引先を名乗る会社が上場審査の調査に答えていた。手口が巧妙だったのか、粉飾決算を告発する内容の投書が東証にあったものの裏付けを得ることはできなかったという。

 2006年のライブドアをめぐる粉飾決算事件を教訓として、東証はマザーズの上場基準を厳格化。コーポレートガバナンス(企業統治)や内部統制状況などを厳しくチェックしてきたはずだった。それなのに、なぜだまされてしまったのか。