暗闇の中を手探りで進み、ようやく遠くに一筋の明かりが見えてきた・・・。自動車メーカー、部品メーカーの2010年3月期決算を概括すると、売り上げが伸び悩む中で黒字転換や増益を達成し、ひとまずは経営の危険水域から浮上した。ただ、今後の経営環境も決して楽観できる状況ではない。いまだ本格的な市場回復を見通すことはできず、暗中模索が続く。
今後、リーマン・ショックに匹敵するような最悪の状況が再び起こらないとは限らない。新興国をはじめとする成長地域への投資を活発化しながら、悪夢が再来したとしても収益を十分に確保できる企業体質に転換することが急務だ。
それを実現するキーワードは「ダウンサイジング」だと断言したい。
ものづくりの永遠のテーマは「最小限の投資で最大限の効果を引き出す」ことだ。ダウンサイジングはそのコンセプトの延長線上にあり、これをどこまで真剣に極められるのかが競争力を占う。
採算分岐点の引き下げに成功したトヨタ
自動車業界にとってダウンサイジングの第1ステージとなったのは、リーマン・ショック以降に取り組んだ企業規模の適正化だ。
非正規社員の契約解除をはじめとした人員の整理、落ち込んだマーケットサイズに見合うよう工場を閉鎖し、徹底して無駄を見直す原価低減活動の一層の強化がその代表例である。
例えばトヨタ自動車の場合、2009年度は米ゼネラル・モーターズとの合弁工場NUMMI(New United Motor Manufacturing, Inc.)での生産縮小(その後、2010年4月に生産終了)、自動車レース「F1」撤退といった固定費削減や原価の見直しによって1兆6900億円を改善した。その努力によって、グローバル生産台数729万台で1475億円の営業利益を稼ぎ出した。
グローバル生産台数869万台で過去最高業績だった2007年度と比べると、営業利益は15分の1に過ぎない。しかし、2008年度が756万台で4600億円の営業赤字だったことを考えると、大幅な採算分岐点の引き下げを実現した。