今年4月13日午前7時40分頃、北朝鮮の東倉里の「西海発射場」から、北朝鮮が言う地球観測衛星「銀河3号」が打ち上げられた。この「銀河3号」に搭載された「光明星3号」は、北朝鮮側の発表によれば、「高度静止気象衛星データ受信機」であり、「農業など人民経済に必要な気象予報研究のための大きな一歩を踏み出す歴史的出来事」になるはずであった。
北朝鮮側は、初めて外国人記者団を招き発射準備の状況を公開した。
その裏には、なみなみならない成功への自信があったのであろう。打ち上げられる衛星は、「重量100キログラムで、高度500キロメートルの太陽同期円軌道を回り、寿命は2年」となり、打ち上げ後、第1段目は全羅北道西方140キロに落下するはずであった。
しかし結果は、みじめな失敗に終わった。韓国国防部のシン・ウォンシク政策企画官(少将)は4月13日、ブリーフィングで「鉄山郡の発射場から、午前7時38分55秒に発射された長距離ミサイル1発が、1~2分ほど飛行して空中爆発した」と発表した。
ロケット1段目は分解して17個、2・3段目は3個の残がいになり、発射からわずか8~9分で、平沢から群山の西方約100~150キロの海上に落下した。
4月16日韓国国防部長官は、銀河3号は発射から1分20秒後、東倉里南方約50キロ上空でロケットの爆発と見られる異常な兆候を見せ、その後も、推力や慣性によって上昇を続けたが、2分15秒たったころに70.5キロ上空で真っ2つに分離したと発表している。
最初の爆発があったのが発射から1分20秒後とすれば、そのころは1段目のロケットが燃焼を続けているころであり、「銀河3号」の爆発の原因は、一段目のロケットの燃料漏れまたはエンジンの欠陥だった可能性がより高まったと『朝鮮日報』は報じている。
もともと無理のあった発射試験
実験は完全な失敗であった。「銀河3号」の破片は、予定された海域よりもはるかに手前の海域にバラバラになり落下した。北朝鮮はこれまでは明らかな失敗でも、「成功」と内外に強弁してきたが、今回は初めて「失敗」を公式に認めた。
北朝鮮は平和目的の「実用衛星の打ち上げ」であると主張しているが、弾頭に何を搭載するかが異なるだけで、ロケット本体は弾道ミサイルと同じである。今回の発射も、軍の要員、施設・装備などを使用して準備され、軍の指揮系統を通じて命令されたものであれば、軍用の弾道ミサイル発射実験であったといえるだろう。
今回の実験においては、科学者や技術者以上に、軍の責任が問われるであろう。なぜなら、今回の発射は、技術的可能性よりも政治的要求を優先させ、準備不十分なまま急がせたと見られるからである。
そうであれば、政治的責任が問われることになりそうだが、その点は独裁体制であり、最高指導部の責任が問われることはない。担当している軍の指導部の責任追及がなされるであろう。
今回の発射試験は技術的には、失敗の公算がもともと高かった。北朝鮮はこれまで1998年を含め4回のテポドン級ミサイルの発射試験を行ってきたが、一度も完全には成功していない。
通常どの国でも、ロケットであれ弾道ミサイルであれ、開発段階においては、地上での度重なる燃焼試験の後、同じ型のミサイルやロケットを十回程度は打ち上げて、その信頼性を確立するのが、常道である。