5月3~4日、中国の北京で第4回米中戦略・経済対話(S&ED)が開かれている。4度目ともなれば結果はある程度予想できるが、今年は開催直前にハプニングが起きた。中国の著名人権活動家が「自宅軟禁」から脱出し、北京の米国大使館に「保護」を求めたからだ。
「保護」と言えば、本年2月に重慶市の王立軍・元公安局長が四川省成都にある米国総領事館に逃げ込んだ話(中国株式会社の研究その151)を思い出す。王立軍の滞在は1泊だけだったが、今回の大使館逗留は6泊7日にも及んだ。北京で一体何が起きたのか。(文中敬称略)
分かれる評価
事実関係の詳細は既に何度も報じられているので繰り返さない。件の活動家の名は陳光誠、40歳。山東省出身、独学で法律を学んだ盲目の弁護士。
「一人っ子政策」による妊婦の強制中絶に反対する運動で世界的に有名となった中国の人権保護活動家だ。
各種報道を総合すれば、陳光誠は4月22日深夜、山東省の自宅を密かに脱出し、26日に北京の米国大使館に入ったらしい。その後、5月2日に大使館を離れ、米政府高官に伴われて市内の病院に治療入院、そこで自宅に残してきた妻子とも再会したという。
この事件の現時点での評価は、以下のとおり大きく分かれる。
●米国政府(クリントン国務長官談話)
陳光誠の選択と米国の価値感を反映する形で彼の大使館滞在・出発を促進できたことは喜ばしい。・・・陳光誠氏と中国政府との間には、より高度な教育の安全な環境での追求を含む、彼の将来に関する多くの了解がある。これらの約束実現は今後の重要な課題となる・・・。
●中国政府(外交部報道官発言)
陳光誠氏は4月下旬に米大使館に入り、6日後に自発的に出た。・・・米国大使館が正常ではない方法で中国の公民である陳氏を館内に入れたことに、中国側は強い不満を抱いている。米国のやり方は中国に対する内政干渉であり、中国側は決して受け入れることはできない。・・・米国にはこの件での謝罪、徹底調査、責任者の処罰、再発防止を求める。
●陳光誠(CNNインタビューでの発言)
大使館滞在中は電話もかけられず、正しい決断を下す情報が不足していた。私が中国に残れば命はない。家族とともに米国に行きたい。米国は具体的な行動で人権を守ってほしい。米国は私に大使館を出ていくよう仕向けていた。米大使館員は病院に付き添うはずだったが、彼らは病院到着直後にいなくなった。中国は信用していない。米国には失望した。見捨てられた。
●米国保守派(保守系シンクタンク研究員)
陳光誠解放のために米国は中国に何を約束したのか。中国政府関係者によれば、米側は「悔恨」の意を示し、「同様の事件の再発防止措置」を約束したという。万一、米国が今後中国人活動家の亡命を受け入れないと約束すれば、中国で自由のために戦う活動家を萎縮させるだけでなく、中国側をより大胆にさせるだけだろう。