今年の桜はどこも遅めの開花で、東京では平年より5日遅い4月2日だった。
桜花爛漫。満開が週末に重なってしかも好天に恵まれた東京では、上野恩賜公園、新宿御苑、代々木公園、目黒川周辺など花の名所とされる場所はどこも例年を超える人出になったという。震災直後で自粛ムードだった昨年の反動もあったのかもしれない。
東京・駒込で人為的につくられたソメイヨシノ
ヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガン。交雑種を含めると日本の桜は自生種だけでも数十種類あるという。
しかし代表と言えばやはりソメイヨシノ。一般に桜の開花と言えばソメイヨシノの開花を指す。各地にその開花の基準となる標本木があるけれども、東京地方で言うと靖国神社にある標本木が「開花」の基準になる。気象庁の担当者が目視でこの木の開花状況を確認し、5~6輪開いていれば「開花」となるらしい。
堂々たる桜の代表のソメイヨシノなのだけれど、実はこれ、野生種ではなく江戸時代に人為交配された交配種なのである。
自然発生説も含めて起源には諸説あるものの、現在の東京都豊島区駒込にあった染井村の植木屋が日本古来の野生種であるエドヒガンとオオシマザクラを交配させて作出したという説が今は有力のようだ。
植木屋の名は「伊藤伊兵衛政武」。植木屋といっても天才バカボンのパパを想像していただいては困る。江戸初期からこの地に代々続く植木屋の5代目、徳川8代将軍吉宗に仕えた御用植木師にして著作も多い稀代の園芸学者。樹仙とも称される。「伊兵衛」はこの家の当主が受け継ぐ名であったらしく、この人を呼ぶときは「政武」とするのが正しいようだ。
政武の父である3代目の三之丞がツツジやサツキの新種をいくつも作ったとの記録があることから、当家ではこの頃までにかなり高度な交配の技術を蓄積していたことがうかがえる。