ゼーリック世銀総裁が6月退任へ、後任人事で新興国と欧米の対立再燃か

ロバート・ゼーリック氏〔AFPBB News

 2月末、ワシントンの世界銀行に勤める友人からメールが届いた。

 2月27日、ロバート・ゼーリック世銀総裁が北京を訪問して「中国2030」と題された報告書を発表し、「現在の中国の成長モデルは持続可能ではない」「所得と生産性の上昇を続けるためには経済構造を変える必要がある」などと力説したのだそうだ。

 ゼーリックと言えば、国務副長官時代、当時のブッシュ政権で最も嫌日・媚中派と批判された人物。その彼が6月の退任を前に北京へ乗り込み中国側に経済政策の根本的転換を迫ったのだから、友人が面白がって連絡してくれたのだ。

 果たして、ゼーリックは本当に反日・親中なのだろうか? (文中敬称略)

同い年の旧友

 ボブ(ロバート)・ゼーリックは筆者と同じ1953年生まれ。初めて彼に会ったのは1993年初め、筆者はワシントン在勤中、場所はハワイで開かれたシンポジウムだったと記憶する。

 当時筆者はペーペーの一等書記官、ゼーリックは(父親)ブッシュ大統領ホワイトハウスの副首席補佐官を退任した直後だった。

 通常なら知り合うことなどあり得ない相手だが、そこは米国だ。彼が「同い年」で「失業中」だったこともあり、結構親しくなった。

 ワシントンの拙宅での夕食に夫妻でやって来たし、その後も暇を見つけては話を聞きに行った。ゼーリックほど聡明で知的好奇心に富んだ同世代の米国人をほかに見たことはない。

 彼とは森羅万象について語り合った思い出があるが、日本が嫌いだとか、日本より中国を重視すると感じたことは一度もない。

 強いて言えば、彼はつまらない話を聞く時が最も退屈そうだった。逆に、知的好奇心を満足させる話なら、どんなことでもよく聞き、よく喋る。静かに理路整然と熱く語る男だった。