国税の一定割合を地方自治体に配分する地方交付税。税収減の厳しい財政事情の中でも、2010年度予算では前年度比7%増の16兆8935億円となった。そこには、夏の参院選を控えて、小泉内閣以来の削減で疲弊する地域経済をテコ入れし、地方票を獲得するとの狙いが透けて見える。

 しかし、実際は「交付税増額=地域の活性化、地方分権」という単純な数式が成り立たない。複雑怪奇な交付税の仕組みについて、新聞も必ずしも実像に迫っていない。交付税制度の内実を読み解くことで、鳩山政権の掲げる「地域主権」の実相をえぐり取る。(文中敬称略)

複雑怪奇な交付税制度

「地域主権」を掲げる鳩山政権だが・・・

 交付税の配分ルールも制度を複雑にしている原因だ。

 法定率、基準財政需要、事業費補正、測定費用、補正係数・・・。交付税の仕組みを理解するのは、古文書を解読するような忍耐力を要する。さすが、スーパーエリート集団である財務・総務両省の官僚が作り上げる地方財政の世界は実に複雑だ。

 交付税は自治体の財政格差を均等化するとともに、十分な税収が確保できない自治体でも一定レベルの行政サービスができるよう、地方が自由に使える財源として不足額を補填するのが目的だ。消費税や法人税など国税の約3割(法定率)を国の一般会計から交付税特別会計に繰り入れ、大半を財政力の低い団体に配分している。

 2010年度予算では景気低迷で国の税収が大幅減となったため、法定率ベースの交付税は前年度に比べ2割も減った。さらに、地方の独自財源である地方税収入も4兆円近く減り、地方の財源不足は法定率分では賄えない規模に膨れ上がった。

 この場合、国と地方が不足額を折半して補填するルールが2001年度から適用されており、総額を巡って財務省と総務省の間でギリギリの折衝が行われるのは毎年の予算編成の焦点の1つとなっている。2010年度については、国が5兆3880億円を赤字国債で補填する一方、地方も同額を赤字地方債(臨時財政対策債)で調達した。

 実は、国・地方が不足額を穴埋めせずに済んだのは2007-08年度の2年間だけ。残りは財務、総務両省の折衝の末、不足額が付け足されており、地方に配分される交付税は慢性的に法定率分を超過していることになる。

先に「加算ありき」

 自治体の財源不足額を算定するルールも複雑だ。地方財政の教科書によると、自治体の財政需要を見通した上で、地方税や地方債など歳入との差額を弾き出し、不足分を交付税として穴埋めすると書かれている。

 だが、実態は大きく異なる。自治体の財政需要を個々に積み上げるのではなく、地方財政の歳出規模を全体的に膨らませることを事前に決める方法が横行している。自治体の歳出規模を膨らませれば、その財源不足額も増えるため、結果として交付税の規模をかさ上げできるためだ。