2010年3月23日、日本経済新聞社が有料の電子新聞(4月末まで無料)を創刊する。また、NHKは夜11時台に経済とスポーツに特化した新番組「Bizスポ」を29日スタートする。表面的にはメディア界では経済報道の強化が進むように見えるが、こうした動きが「特ダネ」偏重という我が国独特の報道傾向をますます強める懸念もある。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が先行した新聞の有料・電子化が、日本でも本格的に始まった。米国の新聞経営はその収入を7割近くも広告に依存すると言われ、企業広告のウェブへの移行に加え、リーマン・ショック後の広告急減が経営の根幹を揺るがせている。2009年にWSJ幹部と面談する機会を得たが、米国の新聞社は経営の維持を図るために、電子化や有料化の是非を問う余裕はない旨述べていた。

 日本の新聞社の経営構造はこれとは多少異なる。まず新聞の値段がやや高めに設定されており、その収入は広告と販売で半々だという。そして家庭での宅配購読者が多い点も、街頭売り中心の米国とは対照的だ。

 こうした中で有料電子新聞を発行する日経の戦略は、深刻な広告不況と若年層の新聞離れに対応するため、「経済記事」という特殊性で読者を囲い込むのが目的だと見られる。一方、大手一般紙はインターネットの速報性に打ちのめされているが、記事の特殊性では読者を囲い込みにくい。だから、有料電子化に追随するのは難しいとも言われる。