トヨタ自動車社長が出席した2月24日(米東部時間)の米下院公聴会は日米両国で大きく報じられた。しかし、その翌日、同じ米議会の上院で「米国の対中債務:その意味と影響」をテーマとする公聴会が開かれたことはあまり知られていない。
舞台はこのコラムでも以前ご紹介した「米中経済・安全保障検討委員会(以下USCC、U.S.-China Economic and Security Review Commission)」。2000年に米議会が設置した、中国に批判的なことで有名な超党派組織である。
前回、金融分野での米中衝突は時間の問題だと述べた。今回はこのUSCC公聴会の概要をご紹介しながら、米中金融摩擦の現状を概観してみたい。(文中敬称略)
悪化する対中イメージ
考えてみれば、このUSCC公聴会、決して唐突な話ではない。最近になって米国における中国のイメージが急速に悪化し始めたからだ。特に、同公聴会の1週間前に実施された世論調査の結果は象徴的である。
調査したのは米大手のゾグビー・インターナショナル(Zogby International)。「米国の長期的安全保障にとってより深刻な脅威はどちらか」との問に、27%が「イスラム過激派のテロ」を挙げたのに対し、何とその2倍以上の58%が「米国の対中債務」を挙げているのだ。
アフガニスタンでアルカイダと戦う米国で、「対中債務」は「イスラムテロ」より大きな脅威だと思われている。しかも、これらの数字は民主党支持、共和党支持、無党派の間でほとんど変わらない。中国政府関係者にとっては何とも不気味な数字だろう。
日本叩きから中国叩きへ
公聴会の証人の中に懐かしい名前を見つけた。クライド・プレストウィッツ、年配の日米貿易関係者なら不愉快な思い出があるはずだ。「日本株式会社」全盛期に対日強硬論と米国の産業政策の必要性を説いた日本叩きの先鋒である。
このジャパン・バッシャーがいつの間にかチャイナ・バッシャーに変身していた。プレストウィッツは「事実上世界最大の米財務省証券保有国である中国は、米国経済の回復を促進する一方で、世界の覇権国としての役割を強めている」と説く。